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大事に育てているのに何故やめる?若手・早期離職の怪。

2023.03.15

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仲間が退職していくのは寂しいものです。一方で新天地に羽ばたく彼・彼女らの姿は眩しく、留まる自分も頑張らなければと思います。しかし、組織側はそう悠長ではいられません。採用費用がムダになり、貴重な人材を喪失し、いいことなんて一つもありません。

若手社員は何故やめるのか?

企業を悩ます社員の早期離職。早期離職とは、入社後の早い時期に退職をすることです。厚生労働省の新規学卒者の離職率調査が、入社後3年以内に退職する人を対象としていることから、一般に3年以内の離職を早期離職と呼ぶことが多いようです。

直近の厚労省の調査発表は202210月にあり、大卒者の早期離職率は31・5%でした。

大卒新入社員の早期離職率は、リーマンショックなど世の経済状況の影響から、若干の上下動はあるものの、その後10年は30%台が続いています。

労働人口の減少が現実となるなか、会社はよい人材を自社に招くために心血を注いで採用活動をしています。入社後も、研修とOJT制度を用意し、昨今では1on1も取り入れるなど、新入社員や若手社員の一人ひとりを大切に育成し、守り、繋ぎとめようとしてきました。

皆さんの職場でも、「若手社員を受け入れては離職」の繰り返しに疲れ、今年の新入社員こそは無駄に傷つかないようにと、丁寧に大切に育成しているのではないでしょうか。

各種調査機関や企業がする退職者を対象とする調査で退職理由聞いています。

厚労省の調査では、・給与・報酬が少ない ・会社の将来が不安 ・労働時間・休日が少ない、の順となっていました。

また、独立行政法人労働政策研究・研修機構が2020年に行った調査によると、入社1年以内など年次の若い人の離職理由は、・肉体的・精神的に健康を損ねた ・人間関係がよくない ・自分のやりたい仕事ではない ・仕事がうまくできず自信を失った、となっています。これが入社3年~5年の社員になると、・労働時間や休日、休暇の条件がよくない ・賃金条件がよくない ・キャリアアップ ・会社に将来性がない ・条件に合った仕事が他に見つかった、となり、1年以内で離職した人とは異なります。

もちろん、これらは一部の調査結果であって、離職理由は離職者の数だけあるものと思われますが、傾向として頭に入れておいてもよいでしょう。一口に若手社員の離職といっても、ほぼ入社したてで辞めていく一群と、少なくとも3年は在籍し社会人経験を積んだ人たちでは、離職理由が違うわけです。

組織側が離職理由を本音ベースでヒアリングするのは難しいとしても、離職理由が、採用時のミスマッチや本人の「不満」によるものなのか、あるいは会社組織の構造的条件や将来の展望への「不安」によるものなのかの区別は把握しておきたいところです。

若手社員と会社組織の価値観ギャップ

若者雇用促進法やパワハラ防止法、働き方改革関連法などの労働に関わる法改正を受けて、会社組織側は、なかば強制的に職場環境の見直しを行いました。加えて育児介護休業法が令和44月から段階的に施行されて、私たちは仕事との向き合い方を見つめ直し、自分というリソースを生活にどう配分するのかを考えはじめました。

このように法改正、世論の影響などもあって、日本の企業は変わりつつあるといえるのですが、いまだ十分ではない側面も残されています。

たとえば、上記の法改正は大企業から順に施行されていきましたが、組織の隅々まで変革を行き届かせるには、今後も時間が必要です。また、後発で準拠することとなった中小企業も、経営基盤のぜい弱さ、慢性化した人員不足などを要因に、余裕をもった職場・労働環境の実現は難しいのが現状です。

一方で若手社員はというと、学生時代から(SDGSの取り組みに代表される)理想社会を学んでいて、上記の労働関連法の改正についても知っています。また、ハラスメントが表面化し問題視され始めてから一定の時間が経っており、彼らの受けた授業や部活動は、かつてのように厳しくはなかったことが想像されます。そうした学生時代を過ごした若手社員の価値観は、職場・労働環境を変革しようと目下努力中の会社組織のそれとは相当の乖離があることでしょう。

それでも会社組織側は変革を続けてきました。5年前の職場と今現在では、別の会社のように働き方が変わったという企業もあると思います。ベテラン社員は自分の若い頃の会社と比較して、現在の組織の在り様を十分に「働きやすい」と感じるかもしれません。

しかし、それは「かつてと比較して」というだけに過ぎません。

早期離職を考える人の「不満」を解消するには、もっと根本的な「働きやすさ」が求められているかもしれないし、将来展望に対する「不安」を払拭するには、堅牢な経営基盤の構築はもとより、社員個々人に見合った現実的なキャリア支援が必要かもしれません。

早期離職を防ぐには

一般に離職防止策として挙げられるのは次のアクションだと言われています。

①離職理由のヒアリングによるピンポイントの対応
②職場のコミュニケーション活性化
③労働時間の短縮(有給取得、サービス残業の削減)
④平等で公正な評価制度の構築
⑤ハラスメントのない職場環境の構築
⑥充実した福利厚生
⑦上司のマネジメントスキル向上を含む人材育成制度

たしかに、これらが更新されていかなければ、職場に不満を感じて離職する一群を引き留めることは難しいでしょう。ただし、①~⑦が整備されたとしても、将来展望に「不安」を感じて辞めていく社員を引き留めることはできません。なぜなら、ここでいう「将来展望」とは、会社組織の将来とともに、社員本人の人生を見据えた将来を指すからです。

冒頭で記した、厚労省の「新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)」の調査では、事業所規模ごとの離職率も発表されています。それによると、従業員500人以上の企業で29.6%、1000人以上の大企業でも離職率は25.3%あり、比較的に経営が安定していると思われるような企業でも、3割に近い若手社員が職場を離れています。

この調査結果を見ると、勤務先組織の経営基盤や体力ではないところにも離職理由があることが推量できます。それが「不満」なのか、「不安」なのか正しくは分かりませんが、独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査結果などを見ると、「キャリアアップし、社会人の一人として自律した自分でいたい」という願望が見え隠れするように思えます。

「労働環境がよく働きやすい、でも、この職場にいて成長できるだろうか?何者かになれるだろうか?」

こうした将来に抱く不安や焦りに対して、どのように手を差し伸べることができるのか、今、企業はそんなことが問われているのではないでしょうか。

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