Column
ロクゼロコラム
ビジネスパーソン1UPへの道
忙しい人の必須テク、仕事がはかどる「締め切り効果」
2021.05.06
朝、ギリギリまで布団に入っていて慌てて支度、 皆さんはこんなことありませんか。思えば子供の頃も、遊び呆けていた自分を恨みながら、始業式前日の夜中まで夏休みの宿題をしていたものです。今年こそ計画的に取り組むぞ、と誓うのですが、順調なのはスタートダッシュだけ、夏休みの中盤にはダラダラと進まず、結局、泣きのラストスパートが必要でした。
追い詰められて本領発揮?締め切り効果とは何か。
子供の頃は毎日の宿題やテスト勉強、大人になってからは資格試験や仕事の納期など、人生には締め切りがつきものです。将来の締め切りを意識して行動できる優秀な人は、これからお話する締め切り効果、パーキンソンの法則には無関係かもしれません。しかし、そうした人は案外少ないもの。おそらく多くの人が経験をしている、「夏休みの宿題スタートダッシュと中盤のダラダラ、そしてラストスパート」は、まさしくパーキンソンの法則を表しています。
パーキンソンの法則とは、1958年にイギリスの歴史・政治学者C.N.パーキンソンが、その著書「パーキンソンの法則・進歩の追求」で提唱した次の3つの法則の総称のことです。
・第一法則…仕事の量は、その完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する
・第二法則…支出の額は収入の額に達成するまで膨張する
・凡俗法則…組織はどうでもいいものごとに対して、それに不釣り合いなほど重点を置く
要するに、パーキンソンの法則は、「人間は時間やコストを無駄に費やす不合理な存在である」ことを示しています。私たちは、短期間でできることも、不要に長い期間の作業時間を設定すると、真っ正直にその時間分を費やすというのです。夏休みの宿題の例でいうと、「中盤のダラダラ」がパーキンソン第一法則でいう「膨張」です。一方で、パーキンソンの法則には逆説も成り立ちます。納期を短く設定すると、コンパクトになった期間中に終わらせようと、集中力が働くのです。この集中力が生まれる心理現象を「締め切り効果」といいます。
締め切り効果の上手な活用法
短納期であることによって集中力が増すなら、それを活用したいと思いますよね。しかし、闇雲に納期を短く設定してはいけません。ここで大切なのは、「適切な納期」です。余裕があり過ぎても集中力を発揮できず、逆に作業期間が短か過ぎても納期に間に合わなくなります。とくに仕事の納期設定は慎重を期すべきです。
まずは、My納期で締め切り効果を活用してみるのもよいでしょう。ちなみに私は朝活を実行しています。朝の早い時間ならメールの返信や突発的な仕事が発生せず、やりたいことに没頭できます。この場合の納期は会社の始業時間です。強制力がありますから、それまでに済ませたいという気持ちが生まれ集中力を得ることができます。
自発的に納期を設定するにはタスクを細く分解しておくとよいでしょう。大きく捉えたままのタスクでは、何から手をつけてよいか分からず途方に暮れてしまいます。一方で、タスクを詳細に分解すると、それがスキマ時間にできることなのか、まとまった時間が必要なのかが分かり、効率的にスケジュールを組むことができます。
例えば、このコラムの執筆というタスク。分解せずにそのまま「コラムを書く」としたら、作業につかみどころがなく取り掛かることができません。ためしに分解してみます。
①テーマ決め…本屋で流行りのタイトルを観察、インターネットで注目ワードを検索
②構成…ターゲットと目的の設定、タイトルと見出しを決める
③情報収集…本を読む、研究資料を探す
④本文を書く
⑤推敲…誤字脱字、表現の平易化、句読点の位置、誤字脱字2回目、タイトル・見出しの再考
いかがですか?まずは着替えて、駅ビルの大型書店に出向く準備を始めることができますね。③と④は時間がかかりそうなので、たっぷりの時間を調整します。①②⑤はそれよりも短時間ですみそうです。スキマ時間に少しずつスケジュールに組み込めます。
また、自分の時間の使い方や仕事の癖を知るのも、適切な納期を設定するのに役立ちます。それはスケジュールの狂いを最小限に抑えることができるからです。
日々のタスクとその費やした時間の記録をとると、得意でポジティブにこなせる仕事、苦手で持ち戻りが発生しやすい仕事、効率よく仕事が進む時間帯と集中力が途切れやすい時間帯、あるいは、スムーズに仕事が進むパートナーと話し合いや確認が生じるパートナー、といった仕事の進め方の傾向がつかめてきます。細かく記録をとるのは面倒ですが、無駄な時間も浮き彫りになるので、それだけでも価値があります。定期的に記録をとる期間を設けて仕事の仕方を振り返ることをお勧めします。
締め切り効果活用の注意点
集中力の増す締め切り効果。活用して時間を有効に使いたいところですが、それには注意も必要です。
パーキンソンの第一法則は、仕事量は時間があればあるほど増えるというものでした。こだわりをもって仕事をする人には、完璧を求めてひたすらに仕事の質を追う傾向があります。こうした傾向にある人は、自ら設定した納期を先に先にと伸ばして、いつまでもタスクを完了することができません。たとえば、そんな人がある一覧表の作成を指示されたとします。抜け漏れがなく数字が正しいことで事が足りるのですが、美しく見栄えがするように作り込むのに時間がかかる、こんなことがよく起こります。企画・提案書の作成なら、更にこだわりが表出するでしょう。しかし、どのような仕事にも納期があります。どこかで自分のこだわりに見切りをつけなければなりません。
逆に、締め切り効果の集中力を頼り過ぎるのも考えものです。思っていたほど作業が進まず、納期に間に合わないこともあるからです。また、締め切りに追われた仕事は往々にして雑になることを忘れてはいけません。仕事の質が落ち、結局、持ち戻りになって同僚や先輩に手助けしてもらうことになりかねません。予測なく突発的な仕事に付き合わされることになった人は大変な迷惑です。しかもギリギリまで手をつけずにいたことが余計にヒンシュクを買うでしょう。積み重ねてきた信頼もガタ落ちです。
その他、締め切りや時間に追われることが、プレッシャーとなり過度のストレスを感じる人は、自分の適応範囲内で締め切り効果を活用するべきです。短納期に燃えるタイプの人がいますが、私はプレッシャーに思うタイプです。それでいて、のんびりとしているので締め切り効果も利用したい。結果的にゆるく適度なプレッシャーのかけ方が「朝活」だったわけですが、このような自発的な締め切りと強制的な締め切りの使い分けをするには、やはりタスクの詳細化と正確な時間見積りの習慣化が効果的です。
まとめ
「締め切り」や「納期」には多少のネガティブな響きがあります。しかし、自発的に納期を設定して、締め切り効果を計画的に活用できるようになると、一気に自分の味方となりポジティブに捉えることができます。適切な納期設定でメリハリをつけ、仕事を効率的に進めていきましょう。