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企業が目指すダイバーシティの意味、その成り立ちと効果

2021.10.15

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日本の世界遺産の登録は25件、そのうち自然遺産は、屋久島、白神山地、知床、小笠原諸島の4件です。これら4地域の特色は、希少な固有種の存在とそれを取り巻く生物の多様性にあります。多種多様な命を育む自然は、現在進行中の進化の過程にあり、その様は生き生きとダイナミックです。今回は社会が多様的であることについて考えます。

ダイバーシティの定義と背景

ダイバーシティ(Diversity)は、多種、多様、雑多などの意味を持つ英単語です。これが社会文化の概念として使われるようになったのは、実は60年近く前のこと。それはアメリカにおける、女性や人種的マイノリティの人たちへの差別を解消するための公民権運動が発端でした。

運動によって差別行為が損害賠償の対象となり、企業側が賠償リスクを避けるために、雇用や職種といったことから平等性をはかっていったのです。

始まりの理由こそネガティブでしたが、現在のダイバーシティはもっと前向き、発展的に捉えられていて、企業が成長していくための経営戦略の一つとなっています。

日本でのダイバーシティの広がりは、性別による雇用機会の差別が問題になった1980年代から始まったといえます。1985年の「男女雇用機会均等法」を皮切りに、今年6月の改正育児・介護休業法、SOGIハラ・アウティング防止を措置義務としたパワハラ防止法の成立まで、市民感情や政治主導を受けて法改正を重ね、今に至ります。

特に日本では「少子高齢化」による労働人口の減少がダイバーシティ推進の要因となりました。女性社員が結婚、出産によって退職する状況では、企業が十分な人員の確保を望めなくなったのです。

また、地理的、歴史的な理由から、私たち日本人は人種や国・地域による文化の相違に疎い傾向があります。しかし、世の中は本格的なグローバル社会となりました。各国、地域の文化を知り、商品・サービス、流通に活かすことが、喫緊の経営課題となっています。

企業経営にダイバーシティを取り入れる効果

日本はもとより、先進国の消費は成熟し、消費形態も「物」から「事」へと変化しています。物質的な豊かさより心の豊かさを重んじる傾向も見られ、仕事より自分自身や家族、地域社会での暮らしを優先する生き方も、認められるようになりました。個々人によって働き方が多様化し、企業はそうした潮流を無視することができなくなっています。

そうした背景を慮ると見えてくるのが、企業経営にダイバーシティを取り入れることの効果です。

まず言えるのは、人材の確保です。

前述したように、企業はかつての枠組みを取り払い、性別に区別なく広い世代に人材を求めなければ、十分な人員を確保できません。また、学校でダイバーシティ教育を受けてきた世代の定着をはかるには、古い習慣・ルールを是正したうえで、より踏み込んだダイバーシティ施策が求められます。

レイ・クラインもランド研究所も人口は国力に影響すると提唱しています。この論理に則れば、従業員数は企業力に影響します。もちろん数が全てではありませんが、仕事をするに足る社員数は絶対的に必要となります。

※レイ・クライン…アメリカ、CIA分析官。国力量方程式を提唱。
※ランド研究所…アメリカ、公共政策大学院。国際安全保障の研究を得意とする。

次に、有利性・創造性の向上です。

「物」から「事」へと多種多様に変化する消費行動に対応するには、新しい視点、切り口で商品・サービス開発をしなければなりません。企業が多様なニーズに応えるだけの価値観を保有する方法は何か、その答えがダイバーシティです。

特に国際企業においては、サービスを提供する先の国・地域の価値観にあった商品開発、流通が必須です。それを実現するには地域住民の価値観を戦略的に取り込むのが近道でしょう。開発、製造、流通の各段階で地域の価値観を持つか、理解する社員の存在が助けとなります。

また、そうした今までにない価値観を持つ社員の雇用が、企業にとって新たな創造性の取得につながります。

ニッチだと思われていた消費者層が、実は、一定数の消費母体を形成しているのが現代社会です。何らかの理由で表層化していない、あるいは、私たちに見えていないだけの消費母体が日本、世界のどこかに隠れているのです。かつての常識にとらわれた同一性の高い企業は、そうした隠された消費母体に出会うことはかないません。文化の衝突や融合から生まれる新たな創造性が、新たな需要を生むのです。

まとめ

ここまでダイバーシティの定義、効果とお話ししてきました。しかし、企業を異質性の文化に変換するということは、「違う」ことによる不和がおこることでもあります。一企業の習慣、ルール、文化は長い時間をかけて、居心地のよい状態に成るべくして収まったものです。ここに異文化を投入するのですから、採用方針や就業規則の改訂だけでは事の収拾がつかないでしょう。企業のダイバーシティは私たち社員一人ひとりが受け止め、理解し、行動に移さなければ成功しません。企業や国、国際社会などと、大きな枠組みで捉えがちなダイバーシティですが、結局のところ私たち個々人の問題なのです。

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