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ロクゼロコラム

3分で読める社内勉強会の話

鶏が先か卵が先か。社内勉強会とワーク・エンゲージメントの関係性

2020.07.15

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勉強会参加メンバーに共通する特徴とは

社内勉強会の運営チームが抱える共通の課題に、参加メンバーの固定化があります。ターゲットを変えて参加を募っても、いつもと変わらない顔ぶれということが往々にしてあるのです。参加メンバーの固定化は、「社員が主体的に学ぶ文化を根付かせる」という社内勉強会の主目的実現にとって、実に厄介な現象です。新しい参加者が現れないまま放置すると、業務都合や退職など、致し方ない理由でメンバーが離脱するままに勉強会は縮小していきます。せっかくの社内勉強会が縮小傾向にあるとしたら、何か手を打たねばなりません。

本来は時間をかけてじっくりと醸成していくのが企業文化です。また、企業によって問題の本質が異なるので社員が主体的に学ぶ文化醸成へのアプローチも千差万別です。

ただし、勉強会の参加者に共通する特徴から、新たな参加者を呼び込むヒントを得ることができます。社外セミナーや社内の勉強会に自主参加している人が、どのような仕事観、価値観を持っているかを整理します。

①視野が広く固定観念にとらわれない自由さがある

②自己成長へのコミットメントが高く活動目的が明確である

③自社組織へのコミットメントが高く協働意識がある

その他、外向的であったり、時間管理がうまかったりするようです。

勉強会運営チームを悩ます2:6:2の法則

社内勉強会は、会社や人材教育部門が関与しない「社員の社員による社員のための学びの場」であることが理想形です。第16代アメリカ合衆国大統領、エイブラハム・リンカーンによるゲティスバーグ演説の一部「人民の人民による人民のための政治」のフレーズは、南北戦争を背景にしたものでした。この言葉は、建国以来の危機にあった市民の心に鋭く刻まれ、その後のアメリカ合衆国の在り様を決定づけました。それに対して、「平安」は人の危機察知能力を鈍化させます。一度鈍化した危機意識は、事態の悪化に気づくまでの時間を延伸させます。ビジネス環境の変化を察知できない人に見られる傾向です。

前述の、社外セミナーや勉強会に参加する人の特徴①~③は、先を見通そうとする感覚と問題意識の高さ、キャリア形成をよく理解した人物を思い浮かべることができます。こうした人が勉強会に参加するのは、今自分がとるべき行動を感覚的に判断した結果です。お気づきかもしれませんが、自ら勉強しようとする人は非常に優秀です。そして残念なことに、どの企業でも、優秀な人材は2割で、6割の人が普通、残り2割の人は働かない、いわゆる2:6:2の法則があてはまります。優秀な人材は少数派なのです。つまり、社内勉強会に新たな参加者を呼びこむということは、「優秀ではないが普通」といった一般の社員に、問題意識を喚起させ、自己成長や自社組織へのコミットメントを高めることに他なりません。今は「平安」な時間を過ごす普通の社員が、5年後の自分と組織の成長とを同義にとらえる、ポジティブな危機感を持つことで勉強会への参加意欲が違ってきます。

ワーク・エンゲージメントのイニシアチブをとる

どのようにして自分や会社に対するコミットメントを引き出すかはトライアンドエラーでのチャレンジとなるでしょう。ただ、ひとつ言えるのは「ワーク・エンゲージメントの向上が鍵」だということです。ワーク・エンゲージメントは、互いの信頼関係のもと、社員と会社が対等な立場で価値を提供しあう関係のことで、会社への忠誠心とは違います。エンゲージメントが構築されている企業は、社員一人ひとりの仕事への意欲が高く、自立、成熟した文化を形成する傾向にあります。自分と組織の成長を同じ志向でとらえる社員を育む土壌が備わっているといえるでしょう。 

社員のエンゲージメントを高めるために必要とされていることとして、

  • 多様な価値観の受け入れと個人の能力を発揮できる場の提供
  • 当事者意識を喚起する情報共有と権限移譲
  • 管理職の再教育による主従関係の適正化

が挙げられます。具体的には、1on1や適切なジョブ・アサインメントによって、マイクロマネジメントを実施し、フラットで働きやすい職場をつくるなど、社員のやりがいを引き出す施策が考えられます。卵が先か鶏が先かの議論になりますが、企業に社内勉強会のシステムがあることは、ワーク・エンゲージメントを高めるためにも有効です。

ワーク・エンゲージメント向上は、勉強会運営チームの手がけるべき課題とは言えません。しかし、社内勉強会は、その開催を通して社員の向学心を刺激し、自立した感度の高い人材を育てる唯一のシステムといえるでしょう。2020年春以降、私たちの働き方は劇的に変わり、遠隔地の同僚とオンラインでつながることが特別ではなくなりました。一部の営業拠点で行われていた勉強会を全国に広げていくことも、今なら可能です。また、会社の存続や雇用継続の危機を乗り切った現在、自身のエンプロイアビリティ(:雇用される能力)を改めて見つめなおす社員も多いことでしょう。

「社員の社員による社員のための学びの場」は自己成長にコミットする人材を創出することができます。「企業文化を醸成する」、大仰に聞こえるかもしれません。しかし、勉強会運営チームにこそ、そのイニシアチブをとるチャンスがあるのです。