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ロクゼロコラム

成長企業の社内勉強会探訪

成長企業の社内勉強会探訪 Vol.03_スタートアップテクノロジー編

2020.10.15

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株式会社スタートアップテクノロジー

株式会社 スタートアップテクノロジー

スタートアップ企業の「世の中を変えるアイデア」をプロダクトにするスタートアップスタジオ事業と、未経験〜若手のエンジニア向けのオンラインWebエンジニア養成スクール「RUNTEQ」の運営をしています。「RUNTEQ」では、企業が求める実務レベルの技術を現役エンジニアの講師陣が提供しています。

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自由な発想力とあくなき技術への探求心。成長の先にクライアントがいるからこそ、社内勉強会を継続させる意味がある。

優れたIT技術とアイデアを駆使して、起業支援やWebエンジニア養成スクールを運営する株式会社スタートアップテクノロジー。その教育現場の第一線で活躍し、社内勉強会を牽引する齋藤大地氏に話を伺った。

社内勉強会の様子

社内勉強会の様子

  • 渡邉

    この度は、取材をお受けいただきありがとうございます。早速ですが、御社で開催されている社内勉強会の取り組みについて教えていただけますでしょうか?

  • 齋藤さん

    私の所属する開発部門では、「LT会」という社内勉強会を開催しています。LTとはLightning
    Talkの略称で、参加者があるテーマについて、5分程度の発表を行う会のことです。テーマ内容は、発表者の裁量に任せています。開発部門以外ですと、デザイナー部門や管理部門なども含め、社内全体でも勉強会を実施しています。

  • 渡邉

    勉強会は全社的な取り組みなんですね。LT会の発表者にはテーマ選定の裁量があるということですが、こういった試みを始められたきっかけを教えてください。

  • 齋藤さん

    当社には、技術選定を担うCTO室という4名体制のチームがあります。このCTO室が中心となって、「社内コミュニケーション強化」および「全社員の技術力向上」を目的として、LT会をスタートさせました。

  • 渡邉

    コミュニケーションと技術力の強化ですか。テクノロジーの進化が早いエンジニア業界では、これまで通用していた技術の価値がすぐに減少してしまう印象があります。そういった業界特性も考慮して、新たな技術をキャッチアップする試み、大変素晴らしいと感じます。では、その社内勉強会で扱うテーマは、具体的にどのようなものでしょうか?

  • 齋藤さん

    当社で主に扱うRails(※1)についての内容が多いです。後はもう少し基本的な内容として、SQL(※2)などを扱ったこともあります。当初はCTO室でテーマを考えていましたが、4人という限られた人数ですので、テーマ選びに多くの時間を費やすことは非効率だと感じていました。そういった背景もあり、発表内容は各社員に任せることにしたんです。

    ※1:Ruby on
    Railsの略称。プログラミング言語「Ruby」で作成された、Webアプリケーションフレームワークの1つで、開発の土台となる枠組みのこと。必要な機能を追加していくことでアプリケーション開発ができる。

    ※2:データベースを操作する言語。大量のデータを効率的に取得、更新、削除、追加することができる。

  • 渡邉

    私がインタビューをした企業様でも、多くのご担当者がテーマ選定に苦労されていました。御社では運営メンバー4名という限られた人数で勉強会を機能させるために、テーマ選定を参加者の裁量としたのですね。その他、勉強会運営にあたって意識されていることはありますか?

  • 齋藤さん

    発表内容にクオリティを求めないことです。対外的な資料であれば、ある程度のクオリティが必要ですが、社内勉強会の資料づくりや準備にウェイトがかかると、社員には負担になりますしね。

  • 渡邉

    社内勉強会を継続していくうえで、参加しやすい環境を整えることは重要だと思います。ちなみに、LT会以外に実施している勉強会はあるのでしょうか。

  • 齋藤さん

    実際にあった案件事例をもとにディスカッションを行う、「ケーススタディ勉強会」があります。

  • 渡邉

    実際に基づくケーススタディですか、面白そうですね。始められたのはどういった意図があったんでしょうか。

  • 齋藤さん

    当社は案件ごとにチームが分かれているため、他チームの知見を共有する場がなかったんです。でもこれは非常にもったいないなと思ったのがきっかけですね。もし各チームが担当した案件やそこで得た学びを共有できれば、会社全体の成長に大きく貢献できると思いませんか。

  • 渡邉

    おっしゃる通りです。現場での経験やそれに基づく学びを共有することは、本当に大事だと思います。

  • 齋藤さん

    エンジニア業界では、こうした「生きた経験」が特に大切なんです。インターネットでは、教科書に載っているような基礎的な内容を知ることができます。ですが、実際の案件は基礎だけでは対処できないことが多いんです。例えば、データベースの設計一つ取っても、絶対的な正解はなく、要件によって正解が変わってくるんですよ。

  • 渡邉

    その「生きた経験」を学びに落とし込むために、工夫されている点があれば、お伺いしたいです。

  • 齋藤さん

    題材に「曖昧さ」を持たせることです。あまり詳細に要件定義をしてしまうと、発想の幅や深さに制限がかかり、質の高いディスカッションができなくなってしまうんです。特に難易度の高い案件は、柔軟な思考や対応力が求められるので、社内勉強会では、制限を可能な限りなくして自由にアウトプットできるようにしています。

  • 渡邉

    あえての「曖昧さ」、齋藤さんはじめ運営側の戦略ということですね。ところで、御社はリモートワークをされているということですが、社内勉強会もオンラインで実施されているんでしょうか?

  • 齋藤さん

    その通りです。昨今の情勢を受けて、オフラインからオンラインでの開催に切り替えました。実施頻度としては、週1回です。

  • 渡邉

    オンラインに切り替えたことで、何か影響はございましたでしょうか?

  • 齋藤さん

    直接顔を合わせて話をすることができないため、参加者がオーディエンスのように“見るだけ・聞くだけ”のようになったことですかね。

  • 渡邉

    確かに画面を通じたやりとりは、どうしても一方向からの発信になりがちですよね。オンライン開催にはメリットもありますが、そういった弊害もあることは私も納得できます。

  • 齋藤さん

    そうなんですよね。私どももどうにかできないかと考えて、運営チームができる限り場をコントロールし、参加者側が主体的に発信できる仕組みを作りました。例えば、質問の投げかけに対して参加者の反応がないと対話が進まないという状況を作ったり、参加者をどんどん指名して緊張感を持たせるといった内容です。

  • 渡邉

    そういった取り組みを経て、齋藤さんが感じた参加者の変化はありますか?

  • 齋藤さん

    社内でのコミュニケーションが取りやすくなったと感じます。例えば、リモートワークにおいて、一度も会ったことがない入社一年目の社員に対しても、気軽にチャットで連絡できるようになりましたね。

  • 渡邉

    リモートワーク下で、新入社員といかにコミュニケーションをとるかは、多くの企業で課題になっています。社内勉強会が交流の場としても機能することは、齋藤さんにとっても大変喜ばしいことですね。

  • 齋藤さん

    そうですね。あと、事後の変化でいうと、社内勉強会後の実務に活かされた事例もあります。その時の題材は「アプリケーション内のユーザー招待機能」。汎用的な技術ではあるのですが、多くのエンジニアが開発場面で活かすことのできる内容でした。

  • 渡邉

    社内勉強会継続のためには、そういった目に見える成果が重要だと私も感じます。ここまでは取り組みそのものや事後の変化についてお聞きしましたが、今後齋藤さんが実施してみたいことがあればお聞かせください。

  • 齋藤さん

    以前一度試みた開発合宿をもう一度開催したいと考えています。開発合宿とは、エンジニアが既存チームの垣根を越えて集まり、約1か月間に渡り、あるテーマに基づいた開発を行うものです。テーマはチームごとに異なり、普段何となく気になっていたことや、解決したかったけどできなかったことを扱うことができます。

  • 渡邉

    かなり長期間の取り組みですね。でも、普段一緒に仕事をしない方とチームを組めて、とても面白そうです。

  • 齋藤さん

    面白いですよ。具体的にどういったものを開発したかというと、オンライン合コンアプリ「Fall In
    Love」、ダイエットFlutterアプリなどです。最後には、社長から優勝チームの発表があり、参加者からは「楽しかった」「またやりたいね」などの声があがりました。とても好評だったんです。

  • 渡邉

    合コンやダイエットに関するアプリですか。業務外ならではのユニークな発想から生まれたことが推察できますし、それを実現できる皆さんの技術力も本当に凄いですね。

  • 齋藤さん

    ありがとうございます。最終的にはやはり高い技術力があってこそ、クライアントの課題と真正面から向き合えると思っています。こういった様々なスタイルの社内勉強会を展開することで、社員一人ひとりが成長し、それをクライアントへ還元できればいいですよね。

  • 渡邉

    そこを最終到達地点としているからこそ、技術探求にこれほどまでに前のめりになれるんですね。よく理解できました。さて、最後の質問になります。齋藤さんにとって、社内勉強会を一言で表すとどのような言葉になりますでしょうか。

  • 齋藤さん

    「筋トレ」です。筋トレは、継続することにより筋肉がついていきますよね。私はきついトレーニングをたまにするより、小さなトレーニングを毎日コツコツと継続する方が、大きな効果を得られると考えています。社内勉強会も同様で、継続して初めて目に見える成果につながるのではないでしょうか。高い目標を掲げて3日坊主になっては意味がないので、参加ハードルを多少下げてでも、無理なく続けていくことが重要だと考えています。

  • 渡邉

    「継続は力なり」ですね。御社の社内勉強会に対する想いや取り組み、大変興味深く伺うことができました。この度は、貴重なお時間をいただき誠にありがとうございました。

齋藤 大地(さいとう だいち)

齋藤 大地(さいとう だいち)

RUNTEQ事業部 エンジニア兼講師

大手金融系SIer、スタートアップ取締役CTOを経てスタテクへジョイン。現在はWebエンジニア養成スクールRUNTEQの開発エンジニア兼講師として活躍中。

ライター / 編集者

渡邉 良文(わたなべ よしふみ)

1976年、神奈川県生まれ。株式会社ヒップスターゲート代表取締役。
富士通株式会社を経て、人材育成業界へ転身。数社の研修会社にて講師、コンサルタント、営業統括マネージャーを経験。
2007年、日本を代表する大手電機メーカーの新入社員1200人の研修を総合プロデュースし、大規模研修における独自のノウハウを蓄積。
2010年5月、人材教育コンサルティング会社「株式会社ヒップスターゲート」を設立。現在は受講者を主体とした研修に注力をして商品・サービスを開発。
受講者が研修に没頭できる環境を実現する「ビジネスゲーム」を提供したり、「人は誰でも、常に学習している(自ら成長できる)」をモットーに、研修内製化や社内勉強会といった、企業の人材育成の自走・自立のサポートに力を注いでいる。

著書:勝手に人が育っていく! 社員100人までの会社の社長のすごい仕掛け(かんき出版)