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ロクゼロコラム

成長企業の社内勉強会探訪

成長企業の社内勉強会探訪 Vol.02_桜家編

2020.10.05

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株式会社桜家

株式会社 桜家

桜家は一つの「家族」。何よりも「人」を大切にし、同じ船に乗るファミリーとして、スタッフがあたたかいコミュニケーションでつながっている企業だ。事業内容は食肉小売業・外食産業。食肉小売業は、30余年の経験で得た知識とノウハウから、地域に密着した、「いつも身近なお肉屋さん」としてお客様の信頼を得ている。外食産業では「焼肉きんぐ」「かつや」「丸源ラーメン」等の店舗を展開しファンの心を掴んでいる。

会社HP
https://sakuraya3908.com/index.php

社内勉強会とは、人と人とを繋ぐ「遊び場」である。桜家の未来を担う若き店長が実践する“あえて”の自己流哲学。

人との繋がりを大切にし、従業員を「家族」と表現する『株式会社桜家』。福岡を拠点として、食肉小売業や「焼肉きんぐ」「かつや」「丸源ラーメン」などの飲食店を展開している。若くして焼肉店の店長に抜擢され、自ら社内勉強会の発起人としても活躍する加藤さんに話を伺った。

社内勉強会の様子

社内勉強会の様子

  • 渡邉

    本日はよろしくお願いいたします。まず、社内勉強会を始められたきっかけをお聞かせいただけますか?

  • 加藤さん

    実は最初のきっかけは自分のためだったんです。私は普段から本や動画から知識をインプットすることを心掛けているのですが、それを表現したり他者に話す機会はほとんどありませんでした。そんな折、ある書籍に「アウトプットこそ重要」と書かれているのを目にして、その言葉に腹落ちする自分がいたんです。そこで、知識をアウトプットする手段として社内勉強会を始めました。

  • 渡邉

    知識定着のためにアウトプットを大切にされる考えには共感を持ちます。では、その場に社内勉強会を選ばれたのはなぜでしょうか?

  • 加藤さん

    自分が学んだ知識や新たな価値観・考え方を、共に働く仲間たちにも伝えたいと思ったからです。

  • 渡邉

    なるほど、始めたきっかけこそご自身のためでしたが、徐々に分かち合いの気持ちが生まれてきたのですね。社内勉強会には、社員やアルバイトなど、様々な立場の方が参加されていると伺いましたが、どういったテーマを設定しているのでしょうか?

  • 加藤さん

    他社ではどうか分かりませんが、私が開催する社内勉強会では、業務や会社の売上とは無関係のテーマで開催しています。「人としての成長」を幹に据え、自身の将来像や他者との関わり方など、生きていく上で土台となる考え方を伝えています。

  • 渡邉

    「人としての成長」というキーワードが出ましたが、具体的にどのようなことを思い描かれているのでしょうか。

  • 加藤さん

    人として当たり前のコミュニケーションがとれる、そして魅力的な人になって欲しいと考えています。つまり、人として立派になって欲しいということですね。先日開催した社内勉強会では、“生きる上で大切なこと”をテーマに、その土台となるものは何かを参加者同士で話し合いました。大いに盛り上がりましたよ。

  • 渡邉

    アルバイトの方々からすると、社会人として活躍する先輩方の話を聞くことができる又とない機会ですね。アルバイトの方々を気にかけることができるのは、加藤さん自身が強い想いをもっているからでしょうね。

  • 加藤さん

    はい、例えば焼肉店で働いていると、お肉の知識や洗い物のスキルが磨かれます。でも、そのスキルは焼肉店という限られた業種でしか使えないスキルですよね。アルバイトの方々は将来的に焼肉屋で働こうという方ばかりではありません。自分の夢や生活、人脈など、様々な目標のために当社を選んでいるだけなので、どこでも通用する普遍的なスキルを身につけて欲しいと感じています。

  • 渡邉

    つまり、“生きる上で大切な土台”を身につけて欲しい、ということですね。

  • 加藤さん

    その通りです。あと、もう一つ大切なことは雇用企業としての責任です。アルバイトの約8割は学生なのですが、その親御さんの中には、学業や家族との時間を優先してほしいと考える方も多いと思います。アルバイトはその時間を奪ってしまうので、せめて親御さんの代わりにしっかりと教育をしたいという想いがあります。だから、時には厳しいことを言ってしまうこともありますね。

  • 渡邉

    お話を聴いていると、お店自体が一つの家族という印象を受けました。

  • 加藤さん

    はい、社名の桜家の「家」は、ファミリーという意味なんです。私が入社した時から、「店長は親として、子供たちの面倒をしっかり見ること」と言われてきました。会社経営は、売上も大事ですが、人とのつながりはそれよりも大切です。家族ぐるみで付き合っていこうという雰囲気が、社風としても根付いていますね。

  • 渡邉

    人を大切にされているからこそ生まれる想い、本当に素晴らしいですね。さて、少し話は変わるのですが、現在は社会全体でリモートワークも普及しつつあり、オンライン形式で社内勉強会を開催する企業もあります。御社はどうでしょうか?

  • 加藤さん

    現在は、集合形式で行っています。一度オンラインで開催したことがあるのですが、操作が苦手な参加者もいて、かなり苦労しました。それ以降はオンラインでの開催は行っていないですね。また、これは感覚的な話になりますが、オンラインよりも集合形式の方が、対面で緊張感をもって臨むことができ、結果として参加者の当事者意識や主体的な発言を引き出すことができると思います。

  • 渡邉

    同じ空間にいることで、共に学ぶ意識が育まれるのですね。では、加藤さん自身が社内勉強会を行ううえで意識されていることは何でしょうか?

  • 加藤さん

    参加者へ関心を持つこと、そしてそのための事前準備を行うことです。例えば、参加者と過去に話した内容を思い返したり、幼少期の話をヒアリングしたりしています。そうすると、社内勉強会の際中にも「○○さんは昔こんなことを話してたよね」「○○さんがその経験をした時にどう感じたの?」と問いかけることができるんです。問われた参加者は、その時の状況を思い出すことで、自然と自分事として考えることができるようになります。

  • 渡邉

    なるほど。そういった工夫を経て、参加者にはどういった変化があったと感じますか?

  • 加藤さん

    自然と自己開示ができるようになったのではないでしょうか。また、一緒に働くメンバーの過去や性格、考えを深く知ることで、互いの結びつきが強くなりましたね。

  • 渡邉

    私も学生時代にアルバイト経験がありますが、同僚を深く知る機会はありませんでした。そういった取り組みに参加できる御社のアルバイトの方々はとても羨ましいですね。

  • 加藤さん

    以前は、自分の業務が終わったらすぐ帰宅する人が多かったのですが、せっかく多くの人と関われる機会があるのに、もったいないなと感じていたんです。社内勉強会は、きっかけこそ私のアウトプットの場でしたが、副産物として、コミュニケーションの活性化にもつながりましたね。

  • 渡邉

    勉強会が効果的に機能していて素晴らしいですね。では、そのコミュニケーションの部分で他に意識されていることはありますでしょうか?

  • 加藤さん

    参加者に合わせすぎないことかな。参加者が知りたい話は、どうしても無難な話になりがちなんです。なので、自分が話したいテーマをまず考え、参加者が知りたいであろう内容はエッセンスとして盛り込むというイメージで話しています。この塩梅は難しいですが、私の話に興味がなかったら聴かずに自由にしていいよと伝えています。

  • 渡邉

    その対応は驚きですね。そういったスタンスは、加藤さんご自身の経験からきているのでしょうか?

  • 加藤さん

    はい、以前、母校の高校生100人に対して講演会をしたことがありました。その際、事前に許可をいただいたうえで、「興味のある話でなければ自由にしていいよ」という指示を出しました。生徒たちはどうなったと思いますか?

  • 渡邉

    各々が自由に好き勝手すると思いますが。

  • 加藤さん

    いえ、その逆の結果になったのです。誰一人として途中退出せず、熱心に耳を傾けてくれて。その時、強制的なルールや規則は、人の思考やつながりを断つことがあると学びました。今取り組んでいる社内勉強会も同様で、参加意欲を引き出すためには、あえて自由なスタンスを取らせることも必要だと感じたのです。

  • 渡邉

    そうだったのですね。理想的に勉強会を運営されている様子が伝わりますが、興味を持ってもらうのに苦労はなかったのでしょうか?

  • 加藤さん

    実は特にこれといった苦労を感じたことはないんです。「自分の伝えたい事を伝える」という私なりの哲学を実践しているからかもしれません。例えば、「○○を学んでほしい」という知識やスキルの習得が目的になると、講義や参加者の行動変容に焦点がいき、気苦労が絶えないと思うんです。しかし、自分が伝えたい事であれば、そういったプレッシャーもかからず、自由になりますよね。社内勉強会に対するハードルも下がると思うんです。

  • 渡邉

    あえて自分中心に目的を据えることで、余計な緊張感から解放されるのですね。これから社内勉強会のファシリテーターを務められる方には、最高のアドバイスです!「自分が話したいことを見つける」。重要ですね。最後に、加藤さんにとって社内勉強会を一言で表すとどのようなものでしょうか?

  • 加藤さん

    遊び場です。滑り台で遊んだら、「あの滑り台楽しかったよ」「こんな滑り方もあるよ」と友達に共有することで、お互いに新たな発見が生まれますよね。遊び場のテリトリーを広げることで、仲間が集まり新しい繋がりができます。私にとって、社内勉強会はそういう場所なんです。

  • 渡邉

    加藤さんにとっての社内勉強会は、楽しさを他者に伝播し続ける、「遊び場」ということですね。お話を伺っていて私も大変楽しかったですし、とても勉強になりました。お忙しい中、貴重なお時間を頂戴し誠にありがとうございました。

幸田 八州雄(こうだ やすお)

加藤 哲太(かとう てった)

外食事業部焼肉部門店長

1992年、福岡県北九州市生まれ。株式会社桜家・外食事業部焼肉部門店長。社員教育に携わる傍ら、個人としても精力的に活動。Twitterでは「ブックアドバイザー」として書籍に関する教育。Instagramでは「お酒紹介」。YouTuberとして「1〜2分でサクッと学べる知識」を発信中。電子書籍「私の人生を変えた本20人の
Bookstory」を仲間と共に執筆&出版。独立開業を目指して準備中。夢は「何事も愉しみ続ける人間になる」こと。

ライター / 編集者

渡邉 良文(わたなべ よしふみ)

1976年、神奈川県生まれ。株式会社ヒップスターゲート代表取締役。
富士通株式会社を経て、人材育成業界へ転身。数社の研修会社にて講師、コンサルタント、営業統括マネージャーを経験。
2007年、日本を代表する大手電機メーカーの新入社員1200人の研修を総合プロデュースし、大規模研修における独自のノウハウを蓄積。
2010年5月、人材教育コンサルティング会社「株式会社ヒップスターゲート」を設立。現在は受講者を主体とした研修に注力をして商品・サービスを開発。
受講者が研修に没頭できる環境を実現する「ビジネスゲーム」を提供したり、「人は誰でも、常に学習している(自ら成長できる)」をモットーに、研修内製化や社内勉強会といった、企業の人材育成の自走・自立のサポートに力を注いでいる。

著書:勝手に人が育っていく! 社員100人までの会社の社長のすごい仕掛け(かんき出版)