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ロクゼロコラム

3分で読める社内勉強会の話

社内勉強会のテーマが悩ましい…。リモート時代のテーマの見つけ方

2020.09.24

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体系的な知識のインプットだけではない、社内勉強会のテーマ選定

社内勉強会を開催するにあたって、皆さんはどのようにテーマを決めていますか? 勉強会というと、知識をインプットする場所と思いがちですが、その方向性でテーマを決めると参加者のニーズにはほど遠い、お堅い内容になってしまう可能性があります。もちろん、体系的に知識を得ることも大切なのですが、社内勉強会はあくまでも社員のために実施される学びの場です。皆さん自身が抱える課題や、皆さんの仲間が抱える課題について、対話しながら答えを見つけていくのも一つの形です。つまり、仲間が学びたい、共有したいと思うテーマが設定されていることが、テーマ選定の肝と言えるでしょう。

ただし、昨今のリモートワーク導入で、同じ部署の仲間であっても、仕事をしている様子が見えなくなりました。業務の進捗状況が断片的に耳に入るだけで、デスク越しにちょっとした共有を受けたり、一緒にアイデアを出したりすることは、とても少なくなってしまいましたね。

社員が何を課題に思っているのか、あるいは希望しているのかについて1on1ミーティングで聴き取っていく方法があります。1on1ミーティングは、アメリカシリコンバレーで導入され、今や日本でも多くの企業が取り入れている、上司と部下が1対1で行う対話のことです。評価面談とは異なるもので、週1回や月1回など、短い周期で、仕事の話し、家族や趣味、雑談などをしながら、部下の現状や悩みを聞き取り、部下の能力を引き出そうとするものです。この1on1ミーティングが上手に機能していれば、社員の興味とズレのないテーマを選定することが可能でしょう。

一方で、1on1で話し合われた内容を無配慮に他言することは倫理に反します。このことを前提にすると、勉強会運営チームのメンバーに、1on1を行っている管理職社員がいても、部下から聞いた話しをそのままテーマにすることはできません。1on1ミーティングでの部下の話しをベースにしつつ、日頃の部内、社内の様子を観察して、より広く一般的に社員の興味関心をひくテーマを設定していく必要があります。

ある夕方のニュースのはなし。

話しは変わりますが、

先日、夕方のニュースに、いくつかの企業の2020年度新入社員が出演して、入社式以降、リモートワークが続いている現状について取材を受けていました。中には、9月の時点でも研修期間中という若者や、まだ配属先が決まっていないという若者もいました。

ニュースで取材を受けていた新入社員の言葉です。

「先日初めて出社した。リモートで指導を受けていた先輩はフレンドリーだったが、実際の社内はピリピリしていて驚いた」

「このままでは、来年の新入社員にあっという間に追いつかれてしまう」

「入社して半年がたつが、まだ出社したことがない。仕事らしい仕事ができていないので給料をもらうのが申し訳ない」

今年度の新入社員の現状は、これらに代表されるのかもしれません。

2020年は日本の多くの企業にとって、在宅勤務元年といってもよい年であり、リモートでの働き方を確立しないまま、半ば強制的に在宅勤務に突入した企業が殆どです。新入社員の実践的起用が限定的、あるいは遅れる事もいたし方ないのかもしれません。しかし事はこうした表層的な問題だけではないのです。

社員と組織の関わりを薄めるリモートワーク

私たちは、日常のいかなる場面からも学びを得ています。仕事に取り組む同僚や先輩の様子、取引先企業の担当者の語り口調、失敗や成功を含め、あらゆることが私たちの学びの原点、興味関心へとつながっていきます。ところが、2020年の新入社員はこうした、興味関心が湧きたつ機会が非常に少ないのです。先述のニュース番組では、「指導を受けていた先輩はフレンドリーだったが、実際の社内はピリピリしていて驚いた」と話す若者の言葉に、同時に取材を受けていた別の若者が大きく頷きました。また別の若者は「仕事のイメージが湧かない、つかめない」と語っていました。

経験値のある私たちでも、リモート環境でのコミュニケーションのとり方には課題を感じますね。たとえば、雑談からアイデアが生まれるシチュエーションが少なくなったという声や、担当業務以外の社内の動きが見えなくなったなど、その表出の仕方は様々です。

物事に興味関心を持ち続けるには、業務や人とのつながりを通して、感覚を刺激することが欠かせません。リモートワークは、感染拡大防止の観点、また働き方改革の観点でも大変に有効な手段ですが、人と人、人と業務、人と組織をつなぐ機能としては、やはり万全ではありません。

もう一度見直す、社内勉強会テーマのニーズ

勉強会を社内に根付かせ成果を上げるには、社員が興味関心を持つテーマを設定することが重要なのですが、現在の在宅勤務の状況は、社員のニーズがどこにあるかが非常に分かりにくく、勉強会テーマの選定は一段と難しくなりました。そこで、再度読み直していただきたいのが、この文章の冒頭の部分です。

 “皆さん自身が抱える課題や、皆さんの仲間が抱える課題について、対話しながら答えを見つけていくのも一つの形”

社内勉強会は、知識をインプットするだけの場所ではなく、課題を共有する場としての存在価値もあるよ、ということです。たとえば皆さんが最近読んだ本に「これはぜひ仲間にも知ってほしい」と思った内容があれば、これも広い意味で課題の共有といってよいでしょう。また、もう少しネガティブな課題提示でも問題はありません。先ほどの新入社員の育成の問題などは、現在、どの企業にも起こっている課題でしょうから、社内勉強会のテーマとして取り上げる価値があるでしょう。

皆さんのお一人おひとりが所属する企業の社員であり、皆さんが興味を持つ事柄は、まぎれもなく社員が興味を持つ事柄です。自分の悩みや課題に普遍性はないか、客観的に見直してみてください。もっとも身近な社員サンプルは自分なのですから。