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ロクゼロコラム

3分で読める社内勉強会の話

ふつうの社員が社内勉強会に関わるメリットだけを考えてみた

2021.05.19

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社内勉強会を開催するメリットは、『低コストで社員のビジネススキルを上げられること』『社内のコミュニケーションが活性すること』などを挙げることができます。会社組織に与える嬉しいインパクトはもっともなのですが、参加する社員一人ひとりにとっては、どのようなメリットがあるのでしょうか。一社員としての社内勉強会との関わり方を考えました。

立場:参加者の場合。

社内勉強会とのファーストタッチ。「入社した会社に社内勉強会があった」 「いつのまにか社内勉強会の運営チームができていた」だったな、という皆さんも多いはず。そう、誰しも勉強会の開催側であるより、参加者である可能性の方が高いものです。一般的に社内勉強会の参加は強制ではありません。学んでみたいテーマや、●●部のあの人が講師なら話を聞いてみたい、など自分の動機と勉強会がマッチングしたときにだけ参加する、自由参加がほとんどです。自ら学びの場に足を運ぶ、この主体性こそ社内勉強会の根幹であるといえます。

社員が学習テーマを選択する「カフェテリア式研修」や「e-ラーニング」はどうなの?主体的ではないの?といった声が聞こえてきそうですが、私が受けてきた「カフェテリア式研修」や「e-ラーニング」は受講が義務付けられていました。研修の性質に限って言えば、これらは会社が社員の主体性を重んじて、能動的にスキルアップを図ってもらうためにできることの限界です。それは、会社による指示が前提であるからです。社内勉強会は、学習の場に身を置くかどうかの選択も私たちに任されています。その点で学習意思の強さが研修とは比較になりません。「社内勉強会に参加する」その選択だけで、私の、皆さんのスキルアップの扉は結構ひらいているのです。

ちなみに会社側の弁護をするならば、人材育成部門の人たちは、研修やe-ラーニングに赴く社員の「やらされ感」には、もちろん気づいています。研修は仕事です。しかし、受講しても即売上げにつながるわけではありません。それなのに、社員が研修を受けるには、離席している間に周囲に迷惑がかからないように、諸々の調整をしなければなりません。研修がなければやらなくてよい調整です。だからこそ、人材育成部門の研修にかける時間と情熱は真剣なのです。会社のため、社員のために彼らが企画した集合研修にも、ぜひ前向きに参加してほしいと思います。

プロ講師がいなくてもできる、学びの有効化

さて、話がそれましたが、私たちと社内勉強会の関係は「自由」であることに象徴されます。学ぶ意思、学ぼうとするテーマ、そこに関わることを決めるポジティブな心の動き、その一つひとつが自由であり、能動的です。ところが、勉強会当日に至って参加者は受動的になります。用意されたルームで待ち、勉強会用に作られたスライドを見て、workに参加する。しかも講師をつとめる社員の進行やファシリテーションによって学びの深度が左右されます。テーマの捉え方も、ひょっとしたら思い描いていたものとは違うかもしれません。その点で集合研修に登壇する講師はプロフェッショナルです。たとえ受動的な心持ちの参加者であっても、研修の目的とねらいに確実に導くことができます。では、プロ講師のいない社内勉強会を有効な学びの場にするにはどうしたらよいでしょう。

実は、前段で答えは出ています。つまり「参加の選択」、参加する意思が答えです。講師をつとめる社員も参加者も、社内勉強会を成功させるための因子であることに変わりありません。その意味で、参加者は積極的に意見を述べ、問題提起をしてよいのです。会社主催の集合研修では緊張して質問がしづらい人も、社内勉強会がカジュアルで自由であれば気軽に質問ができます。プロフェッショナルが存在しない社内勉強会では、質問の答えを講師をつとめる社員が持っているとは限りません。別の参加者が持っているかもしれないし、誰も持っていないかもしれません。しかし、参加者同士で答えを見つけるために話し合うことも、参加者が社内勉強会を通してできる成長の一つです。

立場:開催者の場合。

そして、更に参加の有効性を上げる方法が講師をつとめ開催者になることです。学びたいテーマについて話を聞くことはスキルアップの第一段階ですが、参加者が社内勉強会でできることは主にインプットで、受動的です。しかし、知識やスキルはアウトプットしてみないと自分のものになったか分かりません。元来、インプットとアウトプットでは使用する脳の領域が違います。インプット(=理解する、聞く、見る、記憶をする)は脳の後ろの部分、頭頂葉や後頭葉などで行います。アウトプット(=考える、書く、話す、体を動かす)は前頭葉が司っているそうです。「知っていることと出来ることは違う」といいますね。これは脳科学的にも正しい言い回しなのです。

講師をつとめ開催者として社内勉強会に携わると、大方のアウトプットを経験することができます。社内勉強会の講師をすることになったら、まず伝えたいことを整理してまとめようとします。その際、自分でもまだ知らないこと、分からないことに気づくはずです。たとえば、分かりやすく平易な言葉で伝えようとして上手く言語化できない、といった現象です。それは、周辺知識を削ぎ取ってみたら、実は本質が理解できていなかったということ。自信のあるテーマのなかに、理解が足りていない部分がある証拠です。『教うるは学ぶの半ば』といいます。社内勉強会で人に教えるということは、何となくやり過ごしていた不明点を明確にする機会を得ることと同意なのです。

そうして整理した知識を勉強会資料にまとめ、参加してくれた仲間へ伝える行為も、もちろんアウトプットです。『学びを結果に変える アウトプット大全』(サンクチュアリ出版)がベストセラーとなっている、精神科医の樺沢紫苑氏によれば『運動神経を使った記憶は一度覚えると一生忘れない』のだそうです。皆さんも、問題集を繰り返し解いたり、読み上げて英単語を覚えたりした経験がありませんか? つまり、アウトプットすることで知識の定着が期待できるのです。

私たちはアイデアや意見を誰かに受け止めてもらいたいとき、あるいは何かを生み出したいときに、声に出し、文書にし、作品をつくってアウトプットをします。アウトプットは、まさにビジネスで成果を上げるために必要な基本行動であり、社内勉強会に開催者の立場で参加するメリットなのです。

まとめ

社内勉強会への関わり方について、参加者と開催者の両面からメリットを考えました。考えながら、参加者はインプットで、開催者はアウトプットだな、という当たり前の構図に至りましたが、ことに「アウトプットは意識しないといけないなぁ」と、今、自省しています。社内勉強会においては、自ら学ぼうとすること、そして学びを他者に共有すること、このシンプルな意思が、ビジネスパーソンである私たちにベーシックかつ最大のメリットをもたらします。