Column
ロクゼロコラム
3分で読める社内勉強会の話
社内勉強会の運営にダイバーシティ感覚を取り入れる
2020.07.01
25年前、継続できなかった社内勉強会
あるオンラインイベントで同席したS氏と「社内勉強会」の話になり、彼が当時勤めていた物流会社でのエピソードを聞くことができた。
四半世紀も前のことだそうだが、「専務が教え社員が教わる」という一方向講義スタイルの社内勉強会がはじまった。
本社の営業部社員が招集され、テーマは「ロジスティクスの概念」を学ぶアカデミックなものであったらしい。
しかし、この勉強会をめぐって社内に不穏な空気が流れるのである。
その会社は、従業員の多くが地方の倉庫勤務で、早朝から夜遅くまで荷物の搬入と搬出があり汗水流して働いていたのだ。
本社と現場との仕事感覚のズレが、勉強会(あるいは専務)への不満となって表面化し、結局、勉強会は開かれなくなったそうだ。
開催手順だけではない、勉強会が失敗した理由
この社内勉強会が失敗に終わった具体的な理由は、勉強会開催ビジョン、開催の手順、テーマ選定といくつもあるが、真因は別のところにあったという。
この話をしてくれたS氏によれば、
「専務は高学歴で現場の社員を馬鹿にしてた。逆に僕らはフォークリフトに乗れないインテリ専務を笑ってたよ。それに営業と現場がうまくいってないって話、よくあるでしょ」
だそうである。
たしかに営業と現場の対立話はよく聞くが、相手を敬う気持ちや理解しようという気持ちがあれば、勉強会は違うかたちで継続できたかもしれない。
勉強会運営にダイバーシティ感覚を取り入れる
ダイバーシティというと、人種や国籍、宗教といったグローバルな側面を思い起こす人も多い。あるいは女性活躍、社会的マイノリティの問題と捉えることもあるかもしれない。しかし、あらゆる多様性の受入れを考えた時、ダイバーシティはとても身近な問題だ。
S氏の例のような職種や立場がもたらす仕事感覚のズレ、社員の世代間ギャップもダイバーシティの内包物である。
既婚者、未婚者で働き方が違ったり、性別の差はいうまでもない。
今から社内勉強会を始めようとするなら、その立ち上げから勉強会実施まで、あらゆるフェーズでダイバーシティを意識するとよい。たとえば運営チームのメンバーは部門を超えて選抜し、階層も偏らないように配慮する。勉強会の参加者を募るときも、価値観の多様性を念頭におけば、参加してほしい社員層に訴えかける募集コメントが書けるはずだ。
社内勉強会で価値観を共有し昇華する
現在、社内勉強会は多くの企業で実施されるようになったが、その特徴はいわゆる『先生』がいないことである。
社員の誰かが主導的に進行することはあるが、その道のプロというわけではない。参加者は互いに当日のテーマについて対話を重ねながら知識を深めていく。対話のなかでは、他部署の社員の斬新な物の見方や、同じ部署の後輩の思いがけない価値観に触れることがあるだろう。勉強会のテーマが、職場でおこったトラブルや課題の場合、見解の相違で意見がぶつかることもあるかもしれない。
人にはそれぞれの背景があり事象の捉え方も千差万別である。だからこそ多様性を活かした事業の展開、ダイバーシティマネジメントが注目されている。しかし、リモートワーク化が進んだ今日、日々の業務遂行を通しては対話が生まれにくく、ちょっとした雑談や価値観の受容から派生する自然発生的なイノベーションが期待できない。
一方で社内勉強会は少人数開催が原則であり、オンライン勉強会として開催しても参加者の発言が埋もれることは少ない。勉強会での他者の意見から気づきを得ることも、その気づきを業務や商品、サービスに取り込んで新しい価値を創出することも、参加者それぞれに背景があるからこそである。
ダイバーシティは、企業規模の大小に関わらず取り組むべき課題であり、実はとても身近な問題である。
階層や部署を超えて社員が参加できる社内勉強会は、社員がダイバーシティを実感できる又とない好機なのだ。