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ロクゼロコラム

3分で読める社内勉強会の話

社内勉強会を企業の文化に育てるために

2020.06.21

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従業員による“人材育成の自走化”は、少数精鋭経営の中小企業にとって、取り組みたい課題の一つです。昨今実施する企業が増え注目を集める「社内勉強会」は、人材育成の自走化の代表的な一例であり、これを企業文化として根付かせることは、中小企業の長期戦略に有効な施策といえるでしょう。

社内勉強会は、教育・研修の場に他なりませんが、会社が開催する集合研修とは異なり、社員が主導する非公式な学びの場です。よって社内勉強会には何の強制力もありません。参加側はもちろん、運営側も開催“しなければならない”理由がないのです。社内勉強会が企業文化として根付かない根本的な要因です。 次に、社内勉強会が企業文化として定着しない具体的な理由を、参加側と運営側双方の側面から見てみましょう。

参加側

①勉強会の存在を知らない
②自分とは関係ないと思っている
③仕事が忙しく参加する時間がない

運営側

①参加者が少なく勉強会を継続運営するモチベーションが落ちた
②講師(ファシリテーター)が不足している
③仕事が忙しく開催のための準備時間がない

一見すると参加意思や継続意思があるか、時間があるか、といった単純な問題に見えますが、実は会社が抱える潜在的な課題が含まれているのです。それでは、社内勉強会が企業文化として定着しないそれぞれの理由について、もう少し掘り下げてみます。 下の図は『社内勉強会が根付かない理由』を展開したものです。①②③は参加側、運営側に共通すると思われる解決の方法です。

マーケティング思考の告知方法

社内勉強会の告知は、相手が「同じ会社の社員」であることに油断が生じることがあります。全社員に向けて告知をする場合は、キャッチーな告知文で参加者を募り、社員のニーズにあった勉強会テーマを選定しましょう。参加対象となる全社員を「お客様」であるという思考に切り替えることで、自ずとするべきことが見えてきます。

社員間の関係の質、得意分野・問題意識の共有

“関係の質”とは、「互いの理解や尊重、ともに考えることのできる関係の質」です(※)。社内勉強会の側面で“関係の質”向上に期待できることは、マーケティング思考で勉強会を開催するにあたって運営側が把握しておきたい、①社員の得意分野 ②社員が困っていること悩んでいること、の共有です。 関係の質を上げる取り組みには、①社内SNSやチャットなどのコミュニケーションツールを活用した情報発信 ②サンクスメッセージカード(仲間の良い行動をたたえあう制度) ③オフィスに共有部分をデザインする などの方法があります。

①リモートワークが進んだ今日、コミュニケーションは報連相ではなく、「雑相」が鍵を握るといわれています。気軽に雑談ができる組織は心理的な安全が保たれ、かつ新しいアイデアが生まれる可能性があるからです。仕事には直接関係のなさそうな話題であっても切り口に工夫をすれば有益な情報として発信することができます。
②はコストがかからず今すぐに採用できます。自分の周り、先輩後輩の間柄などから始めていくとよいでしょう。
③については会社の支援が欲しいところですが、活用されていない休憩室、ラウンジ、かつての喫煙室などを使いやすく整理することならできるかもしれません。他部署の社員と話しができる空間があれば、社内勉強会で講師(ファシリテーター)を依頼できそうな人材や、テーマに選定すべき職場の課題情報を入手することができるでしょう。 ※マサチューセッツ工科大学・ダニエル・キム教授提唱「組織の成功循環モデル」

負担が少ない短時間の勉強会

社内勉強会は短い時間で開催することが望まれます。非公式な学びの場であるため、会社のミーティングルームを長く使うことや、就業時間外に使うことはあまりよくありません。また、参加する側も運営する側も、仕事に支障なく実施できるように所要時間を設定すべきです。短い時間に設定して意義深いのは運営スタッフや講師(ファシリテーター)の負担が軽減されることです。たとえば60分程度の時間に設定することで、準備する資料のボリュームも少なくてすみます。ファシリテーションの技術があれば、①問題提起 ②事例 ③まとめ の3枚のスライドで十分です。

社内勉強会が継続しない理由を深掘りしていくと真の原因が見えてきます。新しい文化を根付かせるための心理的余裕や会社への貢献意識、あるいは企業ビジョンの共有が不足しているのかもしれません。

ポジティブな文化はポジティブな組織に根付き、ネガティブな文化はネガティブな組織に浸潤します。社内勉強会を企業文化にしたいと思うとき、他社と同じ対応策をとったとしてもアプローチする問題は組織によって様々です。できれば社内勉強会の意義や効果を会社と協議し、共に勉強会が根付く土壌づくりを進めていきたいものです。