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ロクゼロコラム

連載‼「社内勉強会」の始め方

【第6回(最終回)】社内勉強会を根付かせるために忘れてはならないこと

2021.03.10

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これまで計5回に渡って、社内勉強会を成功させるポイントをお伝えしてきました。(過去のコラムはこちら)最終回となる今回は、いかに社内勉強会を企業文化として根付かせるか、についてお話します。社内勉強会が根付けば、発案者の手を離れて、社員たちが自主的に企画・運営してくれるようになります。是非この理想的な状態を目指していきましょう。

地道に気長に1歩ずつ

ただし大前提として、社内勉強会を根付かせるのは簡単ではないことを強く認識してください。期間でいえば、平均して35年の歳月がかかります。長い!待ちきれない!と思われるかもしれませんが、社内勉強会はそのような性質のものだと理解し、地道に、そして気長に取り組んでいこうと考えるのが肝要です。発案者がこの認識と気構えを持つことが、勉強会を社員間に一般化させる道程の出発点だと心得ましょう。

では、短期的に結果を求めるとどうなるのでしょうか。それは組織にとってマイナスにしかなりません。よく見られるのが、勉強会を始めてまだ間もない時期に、売上や利益、残業時間、離職率などの数字を見て、「大して変わっていないじゃないか!」と気色ばむ経営陣の姿です。こうした早急な結果の求め方は、運営チームや参加者にプレッシャーをかけ、もともと関係者の間にある社内勉強会に対する価値観の違いを肥大化させ、人間関係をぎくしゃくさせます。やりにくい面々と開催する社内勉強会には、残念ながら「やらされ感」が出てしまいます。

こうなると社内勉強会の本質が崩れてしまい本末転倒です。そもそも勉強会が、何に対して、どのくらい結果につながっているかは、数値化・可視化することができません。望んだ結果となったとしても、それは複合的な要因がもたらしたもので、社内勉強会はあくまでそのうちの一つだと捉えるべきです。そのため、勉強会終了後に参加者からアンケートを取り、定量的な評価を求めることも、私は必要ないと考えています。アンケート結果が思うような評価でないとき、やはりプレッシャーが生じて、運営側のチームワークにほころびが生じてしまうからです。そうではなく、組織や社員の成長を長期的に見たとき、何かしら寄与するのが社内勉強会なのだと「定性的」に考えて向き合いましょう。

「関係の質」から回す

ここまでを踏まえて、社内勉強会を根付かせるために非常に有効な、「組織の成功循環モデル」を紹介します。これは、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱している理論で、成功する組織はいかにつくられるか、過程や仕組みを分析したものです。この理論によると、組織が結果を出し成功するためには、まず組織を構成するメンバー間の関係の質を高める必要があります。ここで言う関係の質とは、互いの尊重と信頼の度合いを指します。これらが良い状態で安定することによって、良好な人間関係が構築されて組織が活性化します。また、メンバー一人ひとりの思考や行動にも活力が生まれ、望ましい結果につながるというわけです。こうした関係の質の向上からはじまる良い連鎖のことを成功循環モデルでは「グッドサイクル」と呼びます。結果を急ぐ組織にとって、関係の質からのアプローチは一見遠回りに思えますが、この「グッドサイクル」をつくることが、実は最も近い成功への道程なのです。一方、いきなり結果を求めてしまったことにより、組織の人間関係が崩れて思考も行動も鈍くなる一連のつながりを「バッドサイクル」と呼びます。グッドサイクル、バッドサイクル、どちらを目指すべきかは一目瞭然ですよね。社内勉強会を運用するときも、この「グッドサイクル」のように関係の質を強化することから始めるべきです。

 

そもそも社内勉強会は関係の質を高めるために最適な取り組みです。なぜなら、「一人ひとりの知見のすべてが正解であり尊重されるべき」という前提のもとで学びを共有しあう活動だからです。そうした社内勉強会では、参加者がそれぞれに気づきを得て、仕事や生活に戻っていきます。良い農作物を育てるには、良い土壌づくりが欠かせませんが、会社組織を畑に例えるとするなら、社内勉強会は関係の質を高めることによって、土を耕したり肥料をまいたり、といった役割を担っているといえます。社内勉強会は、社員のスキルアップのためだけの方策ではないのです。

 明るさに「指名」が集まる

もう一つ、社内勉強会を定着させるポイントは、運営チームが使命感を持たないことです。何としても定着させよう、社員の成長につなげよう、といった志を持って取り組むことは素晴らしいですが、実際には多くのチームが使命感やプレッシャーが焦りとなり、活動が行き詰まってしまいます。勉強会の準備にも時間や労力をかけ過ぎて、疲弊し、本来業務に支障が出てしまうこともあるでしょう。そのような状態で、勉強会を継続していくのは難しいですよね。

逆に成功しやすいのは「指名」です。例えば、私の通うフィットネスジムのパーソナルトレーナーで、たくさんの指名を受けられている方がいます。指名の理由にはいろいろあると思いますが、その一つはトレーナーご自身が仕事を楽しんでいるからのように思います。仕事に対する取り組み姿勢の明るさ、楽しい気持ちが伝播して周りも幸せになれます。そこに浸りたくて指名が集まるのです。勉強会も同じで、まずは自分自身が楽しむことを念頭に置き、肩の力を抜いて運用していってください。参加したい!と指名が集まる会になり、自然と継続していくはずですよ。

現代はVUCA時代と呼ばれ、物事が複雑で曖昧にからみあい、先を見通すのが非常に困難です。そんな中でも自ら答えを創り出していくことができる、少数精鋭の筋肉質な組織をつくるには、勉強会が最適だと私は考えています。連載を通じてお伝えしてきた、8つの推進フローや学習テーマの選定方法、ファシリテーターの役割などをぜひおさらいして、社内勉強会を始めてみてください。読者の皆様の会社や、社員の方々の「学びの自走・自立」に社内勉強会が少しでも役立てるなら、これに勝る喜びはありません。

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