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ロクゼロコラム

連載‼「社内勉強会」の始め方

【第5回】ファシリテーターは講師にならなくていい

2021.02.10

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真面目に楽しむ

シリアス・ファンという言葉があります。直訳すると「真面目に楽しむ」ということで、立教大学の中原淳教授が提唱しています。何かをするとき、真面目なだけではつまらないし長続きもしない、けれど楽しいだけでは遊びの域を超えません。楽しみつつも真面目に取り組むことが、シリアス・ファンの定義です。仕事でも部活でも習い事でも、この状態を生み出せるかが成果を上げるためのポイントになります。もちろん社内勉強会も同様で、シリアス・ファンを生み出すキーパーソンとなるのがファシリテーターなのです。

この連載で何度もお伝えしてきましたが、社内勉強会は複数の社員が時間・空間をともにすることで、各自のナレッジや意見、考えなどを共有していく学びの形です。役職や立場に左右されずに誰もが自分の意見や考えを述べ合い、主体的かつ能動的に学んでいくスタイルです。研修のように講師・受講者という関係がないどころか、そもそも講師が存在しません。その代わりにファシリテーターが参加者の対話を促進させます。「さあ、自由に話してください」と言っても、なかなか対話は生まれませんよね。ファシリテーターには、全体の音頭を取りつつ、場を活性化させることが求められます。シリアス・ファンの状態になるかどうかもファシリテーターにかかっているのです。と言っても、次の3つのポイントさえ押さえれば決して難しくありません。

 1.ルールを決める

一つ目はルールを決めること。例えばサッカーには、オフサイドというルールがあります。これがなければ、ゴール前で待ち伏せをして得点を狙うという、戦略もなにもない状況になってしまいます。ルールがあるからこそ秩序や工夫が生まれ、ゲームが面白くなるのです。審判もルールに基づいてジャッジや進行をしていけます。同様に、社内勉強会をシリアス・ファンに実施するにはルールを設けるとよいでしょう。大事なのは、会社の風土に合わせたルール設定をすること。A社では有効なルールも、B社には合わないこともあるからです。

【ルールの例:当社の場合】

①参加者がともに教えない、学ぶものとする

②主体的に発信・受信を行い、思考や知識の幅を広げる

③最低1つでよいので、必ず有益な気づきを得る

④すべての発信を、いったんは受け入れる

 2.何を話しても大丈夫

二つ目は、何を話しても大丈夫だと参加者に理解してもらうこと。社内勉強会において、参加者が自由闊達に発言できることはとても大事です。そのためには、誰がどのような発言をしても、決して安全が損なわれることはない、と伝えなくてはいけません。想像してみてください。勇気を出して発言したのに、頭ごなしに否定されたら、二度と口を開こうとしなくなりますよね。当人だけでなく、ほかの参加者にも同じことが起こるでしょう。勉強会の可能性は、参加者の発言量に比例して広がります。だからこそ、ファシリテーターは誰のどのような発言に対しても、否定的なことを言ってはいけないのです。特に役職者や上司がファシリテーターを務める際は注意が必要です。ただでさえ参加者は委縮しがちなので、否定的な発言はもちろん、表情を曇らせるなど態度にも表さないよう気を付けましょう。

発言を促したいときは、ファシリテーターが「こんなこともありますよね」と例を出すのも効果的です。参加者は「こういうことを言えばいいんだ」「このレベルのことでいいんだ」と理解でき、発言のハードルが下がるからです。また、ベテランの参加者には「〇〇さんのやり方を話してもらえますか?」などと聞くと、自尊心をくすぐられ、気分良く積極的に発言してくれやすくなります。

 3.日頃から心掛ける

三つめは、日ごろからファシリテーターとしての心構えを意識すること。ファシリテーターは社内勉強会において、自分と異なる意見も受け入れる必要があります。そのため、普段から違う立場や考えに対して批判的ではいけません。何に対してもLINEで連絡してくる若手社員に対して、「常識がない」と言いたくなったとしてもグっとこらえ、「若い世代とはそうしたものだ」と考えてみるなど、歩み寄る努力をしましょう。

どうしても批判したくなったときは、必ず代案を出す習慣をつけてください。例えば、私は教育業界で注目を集めているeラーニングに対し、「知識習得には有効だけれど対話がないのが欠点だ」と批判するだけでなく、「ほかの受講生と得た知識を共有したり対話できる仕組みがあれば、付加価値になるのでは」と代案を出すところまで踏み込みます。普段からこのように訓練するだけで、異なる意見にも冷静かつ客観的な対応ができ、必要な意見を述べられるようになります。ファシリテーターに望ましい心掛けであることは言うまでもありませんよね。

余談ですが、感情的になりそうな場合は、気持ちを言葉にすることで、冷静さを保ちやすくなります。元プロ野球選手の桑田真澄さんは、マウンドで独り言をつぶやき、精神集中していたそうです。私も講演を行う際、緊張する気持ちを抑えるため、「人がたくさんいる」「手に汗を掻いている」などとつぶやくようにしています。このように緊張状態を客観的に言語化することで、不思議と冷静になれるのです。

 自身も楽しむ

以上が、勉強会を面白くするために、ファシリテーターが意識するべき3つのポイントです。最後に、ファシリテーターとしてのレベルを上げるため、勉強会で心掛けてほしい2つのことを紹介します

一つ目は、言い訳をしないこと。「こういう場に慣れていないので」「忙しかったため資料がまとまっていませんが」など、自己防衛のための言い訳はしないようにしましょう。場がしらけますし、逃げ道を作ることで失敗を正当化させ、成長にもつながりません。もし経験や準備不足があったとしても、それが今の実力と割り切って堂々とふるまいましょう。

二つ目は、他人からの指摘を歓迎すること。ちょっとしたミスや不手際を指摘される度に気にしていてはストレスになります。また委縮してしまい、その後のファシリテーションもぎくしゃくしかねません。資料に誤字や間違いがあった程度なら、指摘されてもニコッと笑顔で「ご指摘ありがとうございます。修正して後で再送しますね」と受け流しましょう。

研修やセミナーの講師は、基本的にある分野の専門家として、知識や知見を受講生に伝授します。一方でファシリテーターは、専門家でもなければ、参加者に教える立場でもありません。もちろん、教育研修のプロでもない。ちょっとしたミスはあって当然なのだと腹をくくり、自分自身も楽しむつもりで取り組みましょう。