Column
ロクゼロコラム
連載‼「社内勉強会」の始め方
【第2回】大きなメリット、小さなデメリット~学びのスタイルで勉強会が理想的な理由~
2020.11.10
人材教育で重要な2つのポイント
「釣りバカ日誌」をご存じですか?主人公のハマちゃんは、釣りをこの上なく愛する会社員。普段はさえないけれど,釣りの腕は確かで、勤務先の会社の社長に手ほどきを行うほど。好きこそものの上手なれと言いますが、ハマちゃんの釣りの技術や知識は、好きだから自然と学び、身についたものにほかなりません。
そう、人は興味・関心を持つテーマであれば、誰かに言われなくても、日常的に学びを行うものなのです。
話は変わって、「7:2:1の法則」というものがあります。これは自己成長のための、効果的な学びの割合を調査したもの。最も多い7割は“自分の経験”で、成功や失敗の体験を指します。残りの2割は先輩や上司の薫陶、1割が公式な研修です。
「人は日常的に学習をしている」「成長のための学びの7割は自分の経験」という2つの概念は、人材教育の重要なポイントです。それを踏まえたうえで、人材育成の3つの学習スタイル(図)について説明し、それぞれの特徴やメリット・デメリットについてお伝えしていきます。
(図)人材育成の3つの学習スタイル
集合研修と自己啓発のメリット・デメリット
1つ目はフォーマルラーニング。公式な学習という意味合いで、集合研修やeラーニングが該当します。企業側の招集を受け社員は義務として研修を受講します。講師と受講生との関係は固定的で、両者が入れ替わることは基本的にありません。
メリットは、会社が社員に学んでほしいことを、会社の決めた段取りで、強制的に学んでもらえることです。
デメリットとしては、研修内容が社員の希望にそぐわず、「やらされてる感」があること。その場合、思うような成果につながらないこともあります。
2つ目はインフォーマルラーニング。非公式な学習を意味し、自然発生的かつ偶発的な学びが特徴です。例としては,先輩に仕事のコツを聞く、本を読んで勉強する、などの自己啓発です。私の友人は、お笑い芸人のYouTubeでプレゼン手法を学んでいましたが、これも当てはまります。講師と受講生の関係は流動的で、学びのテーマによって入れ替わります。
メリットは、課題感をもとにした能動的な学習のため、内容が身につきやすいことです。企業側にとっても介在の必要がなく費用の負担もありません。
デメリットは、学ぶ内容や計画が社員の裁量に委ねられ、企業側はコントロールできないことです。また、個人単位での学習のため、知識・ノウハウが共有されづらい点も挙げられます。
企業が社内勉強会を導入する理由
そして3 つ目が、セミフォーマルラーニングです。これは前述した2 つのメリットを組み合わせ、デメリットを極力排除した学びのスタイル。「自然発生的(能動的な学び)」「計画的」が特徴で、社内勉強会がここに位置づけられます。
もう少し掘り下げてみましょう。社内勉強会の多くは、業務での課題感や必要性を感じた際に、社員によって自然発生的かつ計画的に開催されます。興味・関心のある社員が参加するため能動的に学ぶことができ、知識やスキルが効果的に身につきます。
大きな特徴は、講師と受講者の関係性が存在しないこと。ベテランも新人も同じ参加者として対話をしながら、各々の知識やノウハウを共有し、新たな考えや視点、発想に気づいていきます。勉強会の進行はファシリテーターが行い、対話を促進させます。
ほかに特徴として、勉強会は自社内で行うためコストがかかりません。コロナ禍で売上や利益が落ち、教育研修の予算を削減したとしても、人材育成を止めなくてよいのです。
もちろん、デメリットもあります。フォーマルラーニングのように強制参加ではないので、参加したくなるテーマでないと人が集まりません。すると、継続もしづらくなります。
しかし、メリットの大きさに比べれば大きな問題ではないでしょう。最近は中小企業から大企業まで、効果的な学びの方法として、社内勉強会が高い割合で導入されています。
社内勉強会から見えてくる、あるべきリーダー像
BCP(事業継続計画)といって、災害などが起きても、経営への影響を最小限に抑え、事業や社員の安全を確保するための計画があります。サーバーのクラウド化などはその一例です。私はBCPの1つとして、社内勉強会を取り入れるべきだと考えています。
不測の事態において、リーダーは自らの判断で素早く決断し、行動に移すことが求められるといわれています。会社の存続がかかる瀬戸際では、周囲の意見を聞く時間がないためです。
しかし、私はそうは思いません。そもそも不測の事態に対する正解行動など存在しないからです。リーダーの決断は誤りかもしれず、会社の倒産を招く可能性もあります。社員とその家族が路頭に迷うような、責任感に欠ける行動が正しいリーダーシップでしょうか?
明確な答えがないときこそ、社員の意見に耳を傾けるべきだと私は思います。自分では思いつかない考えや発想が事業継続のヒントになることでしょう。ご多分に漏れず弊社もコロナの影響で、企業向けの新人研修の多くが中止や延期になりました。私はこれまで経験したことのない危機的な状況にとても焦りましたが、1人でどうにかしようとせず、毎日のように社員たちと膝を突き合わせて対話をしました。役職や責任の大きさは違っても、会社存続の危機を打開したいという思いは一緒です。
その結果、非常に有効な施策が生まれました。私だけではどうにもならない状況を、社員の協力により、何とか乗り越えられる目途が立ったのです。
社内勉強会が定着するまでに3年~5年かかります。次の不測の事態に備えるためにも、ぜひ今から導入することをお勧めします。
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