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ロクゼロコラム

連載‼「社内勉強会」の始め方

【第1回】答え合わせではなく創っていけるか?~どんな時代でも生き残る企業のあり方~

2020.10.05

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VUCA時代という言葉を聞いたことがありますか? 変動(Volatility)、不確実(Uncertainty)、複雑(Complexity)、曖昧(Ambiguity)の4つの頭文字からなっており、先を見通すのが難しい時代という意味で使われます。

 2000年以降の日本を振り返るだけでも、リーマンショック、東日本大震災、そして新型コロナウイルスと、経済に大打撃を与える出来事が発生しています。これらの事態を予期できた人も、事態に直面したときに「どうすればいいか?」を知っている人もいないのではないでしょうか。

こんなことがありました。ご多分に漏れず、弊社も新型コロナの影響を受けたのですが、資金繰りについて税理士に相談したところ、「融資を受けましょう、目安は月商の3倍です」とアドバイスを受けました。しかし、私の「この状況が一年以上続いた場合はどうすればいいですか」の問いに明確な答えはありませんでした。不測の事態にどうすべきか、先生と呼ばれる専門家でも答えを持っていません。経営者も経営コンサルタントも同様です。

私たちは、パソコンやスマホで検索すれば、インターネット上の膨大な情報にアクセスすることができます。しかし、「わからないからググろう」では乗り越えられない事態が、まさに今起きています。学校教育のように、「あらかじめ答えがあり、その答えに合わせて生活する」という方法は通用しません。

 そんな時代に必要とされるのは、「答えがない中で、答えを創っていく」創造力と行動力です。蓄えた知識や情報を血肉に変えて、「知恵」として使いこなしていきましょう。会社組織においては、経営者をはじめとした全社員が知恵を働かせることで、どのような時代でも事業継続し、企業の社会的責務を果たすことにつながります。

 適正な人員で最大限の成果を目指す

 では、答えを創っていける組織になるには、どうすればいいのでしょう。

まず前提を整理します。VUCA時代における企業成長モデルは少数精鋭の組織です。理由は単純、いたずらに人員を増やすと、不測の事態で利益が落ちたとき、人件費が経営を圧迫するようになるからです。リストラせずに事業を継続するには、最適な人員構成で、最大限の売り上げ・利益を創出できる、スリムかつ筋肉質な組織でないといけません。また、少子高齢化という社会状況において、労働人口が減少し新規の採用が難しくなります。

 現有戦力を最大化させる。つまり、答えを創っていける組織になるには、社員一人ひとりのパフォーマンスの最大化が必須です。営業担当者の能力が上がれば売り上げが増えますし、管理部門のスキル向上に伴い、コスト削減などが実現できます。

10人の組織の場合、一人ひとりが1.5人分の成果を発揮できれば、15名で働いていることになります。当然ですが人件費は10名分のまま。これがどれだけ大きいことか、説明するまでもありませんよね。ぜひ少数精鋭の組織づくりを目指していきましょう。

 とはいえ、人事担当者が人材育成に割けるリソースは限られています。そこでお勧めなのが、社内勉強会です。次回以降に詳しく話しますが、社内勉強会にはさまざまなメリットがあります。コロナ禍で売り上げや利益が下がり、教育に予算をかけづらい企業でも、コストゼロで行えます。運営の手間や労力もかからず、社員が“自ら学び互いに育つ”のが、勉強会の特徴です。

 また、社内勉強会の参加者は、「教える側」と「教わる側」という上下の関係ではありません。勉強会の進行を担うファシリテーターを設ける以外は、全員がフラットな立場で、学習テーマに対し思い思いに発言していきます。それにより、新しい発見や気づきが生まれ、参加者たちに共有されていくのです。「こんな考えがあったんだ」「その視点はなかった」と気づかされることもあれば、逆に自分の発言が相手に発見を与えることもあります。対話が有機的に機能し、「答えを創る力」を養っていくのです。

 コロナ禍でも成長する企業の特徴

 私は教育・研修事業を通じて、日々多くの企業と接しています。コロナ禍で経営難に陥ってしまう企業があれば、成長し続ける企業もあります。その差はどこにあるのでしょうか。私がそれぞれの企業の経営者と向き合い感じたのは、「経営者と社員がひざを突き合わせ、対等に意見を交わしあえる社風」だということです。

もちろん、コロナ禍に限っていえば、その影響を受けやすい業種・業界やビジネスモデルもあるのですが、社員一人ひとりが自立自走し、ベテランも新人も関係なく、意見やアイデアを口にする。会社はそれに耳を傾け、よい提案は積極的に取り入れていく。そのような組織は有事のときに強さを発揮しています。

 一方、社長がトップダウンで指示を出し、現場は言われたことをこなすのが良しとされる風土の企業は、社員が受け身になりがちです。極端な言い方をすると、指示待ちの社員ばかり育ってしまいます。好景気のときはそれでよくても、コロナのような事態に直面したとき、会社として状況を打破するアイデアが生まれづらくなります。そのときになって「社員は何もしてくれない」と不満を言っても取り返しはききません。このような風土を作ってきたのは、社長その人本人なのです。

 歴史を振り返ると、経済に大打撃をもたらす事態は5年~10年ごとにやってきます。次がいつなのかは誰にもわかりませんが、遠くない未来に、コロナ以上の事態が起こる可能性もゼロではありません。備えあれば憂いなしと言いますが、経営者は、社員が自ら育っていく風土・文化・制度を日ごろから作っていくことが大切です。

 最大の資源はヒト・ヒト・ヒト

 かつて経営に必要な資源はヒト・モノ・カネと言われてきました。近年では、それに情報が加えられるようになりましたが、基本はこの3つです。しかし、今はヒト・ヒト・ヒトであると、私は強く思います。モノ、例えばインターネットが普及している現在において会社の顔となるコーポレートサイト制作やリモートワークの普及に伴って当たり前となったオンラインミーティングは、無料のツールを使って十分に行えます。カネは、事業計画次第でベンチャーキャピタルや個人投資家から十分に集めることができます。また昨今においてはクラウドファンディングといった手法を使えば、広く個人などから一定の資金調達をすることも可能です。このようなことから、モノやカネは必ずしも必要な経営資源であるとは言い切れないのです。

だからこそ、これからの企業の経営戦略は、ヒトを最大の資源と考え、いかに育てていくかが重要なのです。

景気がいいときに人を増やし、景気が悪くなったら人を減らす。そういった場当たり的な人材戦略では、変化の激しい今の時代に生き残ることのできる企業とは言えません。ではどのように人材を育てていけばいいのか、そのカギが社内勉強会なのです。

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