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ロクゼロコラム

ビジネスパーソン1UPへの道

校正のポイント教えます。文章チェックマンの仕事術

2020.10.27

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昨今の自社PRやサービス紹介は、オウンドメディアやメールマガジン、メディアプラットフォームなどに記事を投稿して行いますね。記事の執筆は、プロのライターに依頼するほか、社内の人材が担うことも多いと聞きます。突然、社内ライターに任命されて書いた自分の文章、公開後に間違いを見つけて冷や汗をかく、なんてことありませんか?

実は、長文を書いてこなかったビジネスパーソン

様々なSNSアプリが普及し、つぶやいたり、歌ったり踊ったり、アイデアを即発信できる時代になりました。この『即』というのが肝で、ビジネス成立にもタイムリーな情報発信がカギとなります。企業はスピード勝負で情報を発信するわけですが、多くの企業が同様の戦略をとるため、ネット上に飛び回る情報量の多い少ないは、マーケティング戦略の成果に直接影響します。そのため、今や膨大な数の記事がネットにあふれています。例えば、代表的なメディアプラットフォームである“note”だけを見ても、一日の平均投稿数は15,000件(!)だといいます。それだけ多くの人が、いわゆる“コラム”を書く時代となったのです。

こうした時代になるまで、私たちは長文を書く機会があまりありませんでした。小学生の頃に書いた“作文”は、原稿用紙に多くて3枚、「セリフ」や段落の改行をするなどして、1,000文字前後の文章でした。「卒業論文を書いたぞ」という学士からの反論もありそうですが、コラムと卒論では準備期間が全くちがいます。同じ土俵で論じるのをここでは避けたいと思います。

さて、プロライターが依頼されるネット記事の標準文字数ですが、これは2,000が基準と言われています。

短期間で2,000文字の文章作成をする、これ、ビジネスパーソンはやってこなかった業務です。なぜなら、ビジネス文書には書式がある上に、『短くわかりやすく』 『箇条書きで整理して』と指導されるからです。しかし、そうも言っていられなくなった人たちがいます。それが社内ライターです。

社内ライターに見る、自己校正の難しさ

正しい文章やバズる文章の書き方については多くの書籍が出版されています。それこそnoteでプロライターのhow-toを読むことができます。以外と少ないな、と思うのは校正・チェックの仕方です。校正とは誤字や脱字を正確な文字に直すことで、ネット上のコンテンツも校正がされるべきなのですが、これがどうにも不十分に思えます。企業アカウントで公開された文章が間違っていると、それだけで企業の信頼性が薄まります。誤字脱字や日本語としておかしな表現は、極力『0』にしたいものです。

校正や校閲(内容があっているかを確認すること)はそれだけでビジネスとして成立するほど専門的な技術です。筆者はそうしたプロではありませんが、社内でテキストや文章の確認をする文章チェックマンをしています。そこで、これまでの経験から、校正や文章チェックの仕方について整理してみようと思います。

まず、「なぜ間違ったままの文章がネット上に公開されるのか」ですが、要因として『書き手=校正者』であることが挙げられます。一般的に企業に校正部門はありません。書き手自身が自分が書いた文章をチェックすることになるのですが、これは大変に難しく、うまくいかないのが常なのです。その理由が次の2つです。

・知っている文章・・・第三者の目線になりにくく、次に現れる言葉を思い浮かべながらスラスラと読んでしまう

・脳内で自動修正・・・書くはずだった言葉が頭に残っているため、誤字があっても無意識に修正してしまい気づかない

ここから本題。校正・チェックのポイントとは

では、どうすれば上手く校正することができるでしょうか。社内の文章チェックマンである私がしているのは次の4つの方法です。

①時間をおく、繰り返す

②シングルタスク

③出力する

④音読する

⑤後ろから読む

①時間をおく、繰り返す

書き綴った手紙を翌朝になって見返し、あまりの恥ずかしさに投函をやめた。という経験はないでしょうか。物理的に時間を挟むことで第三者の目線で自分の文章をチェックすることができます。私も時間の許す限り日をおいてチェックし、また日をおいてチェックする、を繰り返します。

②シングルタスク

一つの項目にしぼってチェックします。校正・校閲のポイントは、「誤字脱字」「てにをは」「連番」「矛盾」「表記の揺らぎ」「差別用語・ハラスメント記述」「事実関係」といくつかあります。この複数ポイントを同時にチェックしようとすると見落としが起きやすくなります。とくに校正と校閲を同時にするのは離れ業です。無理なことだと心得ましょう。

※表記の揺らぎ…同じ表現に異なる文字が使われていること 例)気付く/気づく、例えば/たとえば

③出力をする

世の中はペーパーレスの流れではありますが、印刷された文章の方が間違いに気付くことができます。箇条書きや章番号などの連番は、作品が大作であるほどディスプレイ上では見つけにくくなります。また、大見出しやタイトル、キャッチなど大項目も見落としがちな項目の代表選手です。

④音読する

日本語としての違和感に気付くには、声に出して読むのがもっとも手っ取り早い方法です。話すのは得意でも書くことは苦手という人は、とくに音読をお勧めします。オフィスで音読は周囲に迷惑がかかりますが、私は小さな声でぶつぶつと言っています。

⑤後ろから読む

「私は猫が好きです」、これを「好きです」⇒「猫が」⇒「私は」の順に読みます。内容の確認には向いていませんが、シンプルに誤字脱字を見つけるには「後ろから読む」は大変に効果があります。フリーで校正・校閲をしている方にコツを伺ったときに教えていただいた方法です。

これらの他、修正をした後の文章にも注意が必要です。文章の一部を直したことによって主語と述語の関係が崩れたり、後述の文章と矛盾や重複が生じたりすることがあります。一度チェックをして安心するのではなく、繰り返し慎重な見直しをしましょう。私は文章を書くことが好きですが、校正・チェックは難しいなぁ、と感じます。それが自分の文章の校正・推敲となると、どれほど時間があっても足りません。せめて正しく校正された文章を世に公開したいと思います。