Column
ロクゼロコラム
3分で読める社内勉強会の話
プロジェクト・アリストテレスに学ぶ社内勉強会の在り方 ~心理的安全性の確保~
2020.07.22
アリストテレスとGoogle社内プロジェクト
社内勉強会に興味を持ち、このサイトを訪れていただいた皆さんは、アリストテレスの名言「全体は部分の総和に勝る」をご存知でしょうか。
アリストテレスは、時計の部品を机に並べたとしても時計として動かないことを例にあげ、個の力を相互に働かせることの効果を解きました。それが「全体は部分の総和に勝る」という言葉だと言われています。私たちがこの名言を仕事に活かすなら、「一人の力には限界がある。協力してチーム力をアップさせよう」ということでしょう。
Googleは“成果を上げるチーム”の定義づけをする社内プロジェクトに、“アリストテレス”と名前をつけました。プロジェクト“アリストテレス”は、2015年に「心理的安全性が確保されたチームは仕事で高い成果を上げている」と発表して注目を集めます。
心理的安全性とは、ハーバード大学の組織行動学教授、エイミー・C・エドモンドソン氏が提唱した概念で、次のように定義することができます。
◇心理的安全性…言動・行動に対する周囲の非難や拒絶がなく安全を感じられる状態
日本の高度成長期を企業戦士として過ごした某氏によると、「風通しのいい職場ってこと?」だそうです。が、そこに多様な価値観を受け入れる現代のスタンダードを加え、誰もが萎縮することなく意見を述べられる組織風土と言い換えてよさそうです。
社内勉強会の“対話”を支える“心理的安全性”
私たちは、社内勉強会を、「参加者が対話を重ねることで互いに気づきを得ながら学習する場」と考えています。この学習の場に、“職位や立場による発言量の格差”があると思うように対話が成立しません。私たちが社内勉強会の進行役をファシリテーターと呼ぶのも、対話を重視しているからです。ファシリテーターは講師でなくてもよいし、他の参加者より優れていなくてもよいのです。社内勉強会で大切なのは、ファシリテーターを含むその場にいる全員が、何かの気づきを得るために参加する意識です。
もちろん参加者の知識量に違いはありますが、それこそが学びのチャンスとも言えます。
ある業務知識やスキルについて、若手社員のA君が知らなかったり苦手だったりするのには彼なりの理由があります。それを克服したいと思い勉強会に参加したA君ですが、
「的外れな質問をして無能だと思われたくない」
「それに、くだらない質問で時間が足りなくなったら迷惑をかけてしまう」
といった感情に陥り本音を言い出せないでいます。A君をこのような気持ちにさせている勉強会は、心理的安全性が保たれていません。この状態では、A君が知識を得る機会とチーム力を上げるチャンスの両方を失います。なぜなら、A君は本当に知りたいことが聞けません。そしてA君が知らないのは彼の怠慢ではなく、組織の仕事の仕方の問題かもしれないからです。
社内勉強会での対話は、A君が知らなかった理由を紐解く過程で、先輩にも何らかの気づきを与えることができます。参加者の知識量に関わりなく、誰でもが学べる場として社内勉強会が機能するには、参加者が気兼ねなく発言できる“心理的安全性”の担保が必要なのです。
社内勉強会で“心理的安全性”を保つ方法
では、社内勉強会で心理的安全性を保つためにするべきこととは何でしょうか。
①勉強会のルールを明文化する
誰がどのように発言してもよいこと、誰の発言もいさめず否定しないこと。これらを勉強会ルールとして明文化しましょう。そして勉強会の開催時には、毎回必ず全員で確認してから活動をはじめます。勉強会での学びを深め、気づきを得るために参加者各々が共通の認識をもつことが大切です。
②ファシリテーションで発言量を均等化する
組織ヒエラルキーは、形式的にフラットな集団であっても時間経過とともに形成されてしまいます。それは、小学校の教室に発言力のある児童とそうでない児童がいることからも分かります。ファシリテーターは全メンバーが均等に発言の機会を得られるように配慮しましょう。発言のない参加者は「発言しづらい」心理状態にあるかもしれません。まずはクローズドクエスチョンで簡単な発言を引き出すことから始めてみましょう。
③参加者の緊張感を緩和する
複数の部署の社員が参加する場合など、勉強会の空気に一種の緊張感が生まれることがあります。勉強会開始前にファシリテーター自ら近況報告をしたり、仕事とは関係のない軽い話題を振ったりして場を和ませる工夫をしましょう。皆さんもオンライン会議の前、参加者がまだ全員集まっていない時に何となく近況報告をしませんか? 何気ない会話から本題に入ることで会議前の緊張感がほどけるものです。
社内勉強会は身近な職場の問題をテーマに開催されることも多いものです。新しい技術の研究や今後取り入れたい働き方まで、多種多様な問題が勉強会のテーマになり得ます。
もし、職場の心理的安全性を高めたいと感じたら、次の勉強会のテーマを“Project Aristotle”にしてみてはいかがでしょうか。
参考:「効果的なチームとは何か」を知る/Google re:Work