Column

ロクゼロコラム

3分で読める社内勉強会の話

主体的な学びの効果を上げる会社の関わり方

2020.06.25

この記事をシェアする

人材育成を社員の主体性に任せる

社内勉強会のムーブメントをどうご覧になっていますか。 最近の社内勉強会は、社員が学びたいことをテーマに選び、知識を持ち寄るスタイルで開催されることが多くなりました。新しいサービスやトレンド、社員自身の個人的な興味がテーマにあがることもあります。VUCA※1)と言われる変化の激しい今日、何が明日の経営課題になり、職場の問題になるかは不透明です。現場で活きた情報に触れる社員のアンテナを活かすことが、結果的に攻めの組織をつくると言えるでしょう。また、社員に勉強会を任せれば、会社主導の研修で発生しがちな現場との課題感のズレもなくなります。事件は現場で起きているのです。

1 VUCA…世界や市場の不安定要素を4つの言葉の頭文字を取って表した言葉(Volatility=変動性、Uncertainty=不確実性、Complexity=複雑性、Ambiguity=曖昧性)

「主体的な学び」の効果とは

2012年8月、中央教育審議会は答申で、学生が主導して学ぶ「能動的学習」(答申では“学修”と表記)の導入を推奨しました。“学ぶ”の語源は“真似る”なわけですが、VUCAの時代に過去を真似ることの価値は薄まっており、中央教育審議会の答申もこうした時代背景を受けたものでした。

さて、能動的、つまり主体的に学ぶことで何が期待できるでしょうか。ベネッセ教育総合研究所の調査に、 “偏差値55以上の学校群の生徒は「予習中心」、それ以外は「復習中心」” という結果があります。また、ワシントン大学の研究では、受動型授業を受けた生徒の落第の可能性が、能動的学習型の授業を受けた生徒よりも、55%も高いことが発表されています。社会人と学生を並列に論じることはできませんが、本人主導の学びの効果については納得のいく調査結果です。企業においては身につけたスキルの展開が学習の本旨ですが、そもそもスキルや知識の習得がなければ、その先の実践も深まりません。

高次欲求“自己実現”が主体的学びを呼び起こす

では、私たちはどのようにして自ら学ぼうとするのでしょうか。人それぞれ価値観が異なりますが、仕事をしている間は、誰もが働くことによって充足感を得ています。よりよく働きたいと考え、知識やスキルを身につけようとするのは、“自己実現” を満たす手段とも言えるのです。つまり、高次欲求 “自己実現” は強い学びの動機です。しかし、高次であるが故に、雑多で煩雑な日々に学習動機がかき消されてしまうこともあります。精一杯に働いている自分に更に負荷をかけて学ぶことを嫌う心理です。そうした弱い私たちに必要なのは、やはり欲求なのかもしれません。自己決定理論のエドワード・L・デシ(※2)によると、監視や指示命令、ルールや制限は内発的動機づけを低下させますが、同じ状況下であっても、自己主導の機会と捉えられれば、内発的動機づけを高めることができるといいます。

2 エドワード・L・デシ…アメリカ、ロチェスター大学心理学教授。動機付け理論の大家

変化の時代、会社は待っていられない

社内勉強会は、時間や成果といった制限を課された社員たちが、自由にテーマを選択して実施できる数少ない社員教育のスタイルです。VUCAの時代、会社が社会経済環境の変化と戦っているのならば、その前線はそれぞれの職場であり、社員一人ひとりです。前線で戦うがために身動きがとれない社員の補給基地となるべく、会社は、社員の自律的な学習時間と社内リソースの使用を積極的に許諾するべきでしょう。社内勉強会を走らせるのは社員ですが、その仕組みを提供しビジョンを掲げるのは会社の役割だからです。変化の激しい日々が続きます。待ってはいられません。