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ロクゼロ注目!ビジネススキル

年上部下との信頼を築く6つのアプローチ

2023.07.11

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ビジネス環境が変化するなかで、年功序列の考え方が影をひそめています。先輩を敬う気持ちはそのままに役職と年次の間にあった相関関係は薄まり、部下が年上ということも珍しくなくなりました。組織の年齢によるヒエラルキーが崩れた今、年下上司と年上部下とのコミュニケーションはどうあるべきでしょうか。

しみついた美徳。年長者を敬う行動パターン

「ストレスのない仕事はない」と言えるほど、私たちビジネスパーソンは悩みを抱えています。ある調査によると、会社における悩みは「給与」「会社の将来性」につづいて、「仕事の内容」、「上司との人間関係」、「同僚との人間関係」と続きます。複数回答ではありますが、この調査では実に59%の人が上司、同僚との人間関係と回答しました。

人間関係がうまくいかない要因の一つにコミュニケーション不全があります。職場の仲間と「仲良し」になる必要はありませんが、仕事を進めるための意思疎通ができることは絶対条件であり最低条件です。そこに支援や共感の度合いが加わるにつれ、コミュニケーションの質は上がっていきます。

こうした職場コミュニケーションの話しをするとき、今までは長幼の序にしたがった役職分布が前提でした。つまり、上司は部下より年上なのが当たり前でした。しかし、こうした敬うべき相手が年上であり上司である、という“普通”の状況であっても、現在、過去を通じてコミュニケーション不全による、人間関係の違和感やトラブルは起こっています。

そして、ここにきて発生しはじめた年上の部下の存在は、そうでなくても困難だった人間関係の構築に新しい課題を投げかけます。

子どもの頃「年長者を敬うように」と育ち、学生時代、先輩の存在は「絶対的」でした。

私たちは年上の人を敬ってきました。また、年上は指示する側・指導をする側で、年下はそれに従う側だと認識して過ごしてきました。社会に出る年齢の頃には、その概念とそこに付随する行動パターンはすっかり身についているはずです。

年上部下との対話に悩むリーダー

ビジネス環境が変わり、年下上司―年上部下の関係があり得るものとして認識されてきた現在であっても、年下の人が年上の人を指示し、指導することは、やはり見慣れた状況ではありません。したがって、その立場に立った双方は、お互いのコミュニケーションスタンスを探りながら、人間関係を構築していかなければならないのです。

とくに年下上司の心持ちと行動パターンは複雑です。年上の人を敬いつつ、指示し指導するわけですから、言葉遣い一つとっても軸がブレそうです。こうした慣れないシチュエーションでの振る舞いは、大人としての経験値と人間力が問われます。年上上司とのコミュニケーションは繊細で難しいといえます。

ここで年上部下とのコミュニケーションが難しいと感じる要因を整理してみようと思います。

①年齢によるヒエラルキー

社会的な慣習や文化により、年上の人を敬うことが求められてきました。そのため、年上の部下に対して遠慮や緊張感を抱き、意見をしづらくなることがあります。

②経験や知識の差

年上の部下は一般的に豊富な経験や知識を持っています。年下上司がそれを負い目に感じると、指示や指導がしづらく、上司としての自信を保てなくなります。

③コミュニケーションスタイルの違い

一般に年齢が上がるほど、フォーマルなコミュニケーションスタイルを好むようになります。互いのコミュニケーションスタイルの違いを是正しながら対話するのは一種の苦痛となります。

④指示やフィードバックの受け取り方の違い

直接的な指示や指導をされてきたベテラン社員と、優しく丁寧に育成されてきた若い世代とでは、もはや言葉の解釈が違うため、年下上司の指導が年上部下に通じないという事態が起こります。

これらの要因により、年下上司から年上部下へのアプローチには、いくつかのハードルが設けられることになります。年上部下の側に戸惑いや遠慮がないとはいいませんが、これまで年上の人に対してある種の緊張感をもって過ごしてきた年下側のやりにくさは言うまでもありません。

年上部下への指示・指導、そのポイント

ここまで、年長者を敬う文化を背景にした年下上司の苦悩について見てきました。それでは、年上の部下をもつことに悩む年下上司が、指示や指導をする際に気をつけるべきことはなんでしょうか。

①敬意を示す

相手が年上であっても年下であっても、職場のメンバーに敬意を払う気持ちと行動が大切です。とくに年上の部下が持つ経験や知識を尊重する姿勢を忘れてはいけません。

②コミュニケーションスタイル

相手が好むコミュニケーションスタイルで対応します。一般的に年上の部下が好むフォーマルなコミュニケーションスタイルにあわせ、敬語やビジネスマナーの範囲を超えないアプローチが基本です。

③目標や役割

相手が年上であっても、指示や指導を遠慮してはいけません。具体的かつ明確に伝えることで業務効率が向上するだけでなく、年上部下の側のスタンスに迷いがなくなります。

④オープンな対話

年上部下の側も年下上司に遠慮や戸惑いを感じています。お互いが気軽に意見交換ができる環境を作ることが大切です。11がやりにくいなら、チームでフランクに対話する機会を設けるのも手です。

⑤経験を活かす機会

上司が年下であることで自尊心が傷つく年上部下もいます。彼らの豊富な経験を活かす機会をつくり、その能力を適切に評価することが必要です。

⑥フィードバックの配慮

指導や指摘を含むフィードバックを行う際には、相手が自信を失わないように注意します。Yes-But法、Yes-But-Yes法など、コミュニケーションスキルの基本を見直して、対話のなかで自然に活用できるようにしておくのもよいでしょう。

まとめ

年上部下とのコミュニケーションには、相手が年上であることから生じる独特の緊張感や配慮が必要なことがわかってきました。

実際には、ここに挙げた、いわゆるコミュニケーションスキルだけで年下上司と年上部下の間の溝や違和感が解消するとは思いません。なぜなら、その溝や違和感の要因が、単に役職と年齢の逆転現象にとどまらず、昨今のビジネスツール(ITAI等)の急速な進化やそれに伴う商習慣の変化、また働くこと、家庭、個人の人生・生活に対する価値観の変化などにもあるからです。それらが年上部下を戸惑わせていて、環境変化を理解はしていても腹落ちして身についているとは限りません。

しかし、チームが順調に成果を上げつづけるには、部下を信頼し尊重する気持ちが不可欠です。それは、相手が年上であっても年下であっても同じことです。なぜなら、それぞれの部下の能力や経験値を適正に評価し、メンバーが戦力として活躍できるフィールドを提供することが上司としての役割だからです。

そうした意味で、年上部下とのコミュニケーションは年下上司の貴重な経験であり成長機会です。一度「やりにくい」と感じた気持ちを払拭するのは難しいことかもしれません。それでも年下上司は良好な人間関係と適格な指示・指導ができる行動パターンを身につける必要があるのです。

がんばれ、年下上司!

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