Column
ロクゼロコラム
3分で読める社内勉強会の話
何故『みんな』で勉強するの?~ナレッジの共有と対話の必要性~
2020.09.04
社内勉強会は、決して新しい学習スタイルではないのですが、「集合研修よりも時間、費用ともにコストがかからない」といった理由で、変化の激しいビジネス環境を生き残ろうとする企業や、問題意識の高い社員の間で昨今注目度が増しています。
ここで素朴な疑問。
仕事をしていて「ここが足りない」「もっと知識を上げたい」と自分の能力に不安や不足を感じたら、本を読んだりスクールに通ったり、自分で解決していこうとしますよね。一方で社内勉強会は、何故かみんなで集まって学ぼうとします。
どうしてでしょう?
部署や個人が持つ有益な情報を共有する仕組み
皆さんはナレッジマネジメントという言葉を聞いたことがありますか。社員が業務で得た知識やノウハウ、スキルを会社全体で共有して活かすマネジメント手法のことですが、具体的には、顧客情報のデータ化やノウハウのマニュアル化などがそれにあたります。
今日では、IT技術の進展によって、顧客情報をクラウドソフトが管理してくれたり、ビジネスコミュニケーションツールの利用による即時の社内情報共有が可能であったりなど、殊更にデータ化を叫ばなくてもよい時代になりました。
それでもナレッジマネジメントは必要とされています。それは、即戦力として早い成長を期待する人材の幅が広がっていること、データ化・マニュアル化を超えた情報の深度が求められているからです。その要因は2つ。
①人材の流動性
②ビジネス環境の変化の速さ
新規学卒者の3年後の離職率が3割(厚生労働省調査)なのは、皆さん周知の事実です。また、転職を経験した人の割合が53%~66%(リクナビ)という調査結果もあり、人材が一所に収まっている時代ではなくなりました。
自分の仕事を上手にオペレーションしたいと思ったら、社内の協力を得ることは必須です。中途採用で新しく加わった仲間とも早い段階で深度のある業務協力をしていきたいですよね。また、変化の激しい現代のビジネス環境では、質の高い情報共有が欲しいところです。商品知識、外部環境など、今、社内で誰がどのような情報を持ち、誰が共に動ける人なのか、日常業務の枠を超えて仕事を捉えられる頼れる人材は誰なのか、知りたいと思いませんか?
データ化やマニュアル化といった従来のナレッジマネジメントにとどまらない、スピードと深度での社内情報の獲得は、社員の情報共有の場をどのように設定するかに関わってきます。何某かのプロジェクト会議でも情報共有の機能を果たすでしょう。しかし、それでは他社に遅れをとることもあります。事象より前に情報が共有され、かつ活かせるコミュニティが形成されていることが、より重要なのです。
ナレッジ共有にスピードと深度をもたらす社内勉強会
データ化やマニュアル化をゴールとしたナレッジ共有では、情報の端っこが見えるようになります。しかし、実際に情報を活かして成果を上げるにはナレッジユーザーの手腕に依存しなければなりません。とくに、オンラインコミュニケーションがスタンダードになった今、ビジネス経験や社歴が浅い社員は、取りに行った情報をダイナミックに活かすネットワークをなかなか築けないでいます。一般的に、私たちは他部署の情報に疎くなりがちですから、それは致し方ない事とも言えます。しかし、理想的な社内ネットワークが構築されるのを待っていては、積極的なビジネス展開はできないでしょう。
そこで、私たちはみんなで集まって勉強会を開きます。勉強会のテーマは全方向に設定が可能ですから、他部署に活かしてほしい自部署のデータや知識をテーマにしても勿論かまいません。社内情報のナレッジを目的とした勉強会テーマは、次のようなカテゴリーが考えられます。
■成功事例の紹介と再現性の向上
■失敗事例の検証と改善案の検討
■業務改善プロセスの紹介と横展開の模索
■商品開発、技術開発の途中経過
■将来的に必要と思われる新しい知識や技術の紹介
これらのカテゴリーを社内勉強会のテーマに設定して参加者を募れば、少なくとも勉強会というネットワークのなかで、戦略的な情報共有がされたことになります。たとえば、テレワーク中心に仕事をすることになった経験の浅い社員が、こうした勉強会に参加したと仮定すれば、“貴重な社内情報”とそれを活かそうとする“頼れる同僚・先輩の顔触れ”を同時に知ることができますね。
社内勉強会で情報の発信者に直接話しを聞き、自分のナレッジと合わせて新たな価値やアイデアに展開することができれば、情報の深度と活用度は一気に上がります。
会社企画の集合研修でも、社内情報を共有することは可能ですが、社外の講師が登壇することが壁となり、社外秘にあたるような情報の開示が難しくなることがあります。また、集合研修は小回りが利きません。開催時期の決定や受講者の選出などがあり、思い立ったら即実行というわけにいかないからです。
踏み込んだ『生』の情報を共有できること、スピード感、そして、本当に知りたい人のもとに情報がもたらされるという点で、社内勉強会はナレッジ共有の場として又とない位置づけにあると言えます。
まとめ
ナレッジの共有には提供者と利用者がいて、両者は時に反転します。社内勉強会もしかり。ファシリテーター(=講師)と参加者はテーマによって入れ替わります。なぜみんなで勉強するのか、それは社内勉強会が単なる知識の習得のための集まりではなく、社内に隠れているデータ、技術、知見をその保有者の登壇によって資産化し、会社の生産性向上をはかる取り組みだからです。
皆さんや皆さんが所属している部署の当たり前が、他部署にとっては得難い情報かもしれません。社内勉強会をとおしたナレッジの共有をお勧めします。