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ロクゼロコラム
ロクゼロ注目!ビジネススキル
後輩指導をする自分のための心構えとは?
2023.03.22
「忙しいのに後輩の育成なんて」「後輩指導って評価してもらえるの?」。効果や成果を定量で評価することが難しい後輩指導は、結局のところ指導者の“やる気”に頼るところが大きくなるものです。後輩の指導者に指名された、指導者としての自分に悩んでいる、今回は、そうした方々と後輩指導の心構えについて一緒に考えてみたいと思います。
新人や後輩の指導を任される、とはどういうことか
仕事の成果は数字や形となって表れます。想いを寄せ、手塩にかけた仕事が数字・形になれば達成感があり、加えて周囲の評価が高ければ、私たちの心は満たされ晴れやかになります。
しかし、成果を数字や形で表しにくい類の仕事の評価は、抽象的で、無理やり数字にしたとしても、加点ではなく減点方式になりやすくもあります。
今回のテーマである“後輩指導”は、組織のあらゆる部署で365日間にわたって行われているほど、組織を維持し成長させるために重要な業務です。ところが後輩指導は、指導者と指導される側の組み合わせや各々の資質が成果に影響するので、一概に「できた」「できない」で単純に評価することができません。
せいぜい指導者側に「やった」「やらない」を意味する“基礎点”を加えるのが限度でしょう。まして後輩の離職や休職などがあれば、減点方式で評価を落とされ、指導担当者は、後輩指導どころか本来業務のモチベーションまで下げてしまうことがあります。
一方で、組織の側も、こうした後輩指導の特性を認識しており、指導者に誰を任命するかは慎重を期して決めています。ちなみに日本の若年失業率は4.2%。8.3%のアメリカや10.6%のイギリス(2022年3月、OECD.Stat)など欧米に比較して低い数値で、日本では若手の労働力にそれほど余剰がないことが分かります。企業が、新人や若手が組織から離れていかないように、最大限に気を配るのも理解できるというものです。
つまり、新人や若手の指導者として指名されたことは、その後の評価以前に既に意義あることです。組織を担う大切な若手の育成のために指導者に指名された、もしくは、そうした役割を担える人材になることを期待されている、と解釈できるのです。
指導者に期待されること、指導者が期待したいこと
前述したように、後輩がいる、部下をもつということは、組織からそれなりの期待をされる立場です。指導者やメンターとして正式に指名されたのなら、尚更その期待の程は明確です。ここで後輩を指導する立場のスタッフにかけられる期待について改めて考えてみます。
後輩指導はスキル的にもメンタル的にも簡単ではありません。
自分の仕事に成果が求められるなか、指導手順を組み立ててティーチングとコーチングを使い分け、斜め方向から飛んでくる後輩の質問に丁寧に応え、致命的なミスに繋がらないようにタイミングのよいところでサポートをする。その他、育成レポートの作成や上司への報告義務もあるでしょう。
もちろん、後輩の気持ちが落ちてしまった時はそのフォローもします。とくにOJT制度とメンター制度が明確に区分けされていない場合は、後輩の離職防止や精神的なサポートにも気を配る立場にあります。自分の仕事もしながら、後輩指導をするのはなかなかにハードなことです。
また、自分の仕事に集中できるのかというと、そうではないこともあります。なんやかやと急かされ変更され、ムチャ振られることも珍しくないのが仕事というものです。それでも自分の行動と裁量の範囲でタスクを消化していけるうちは、大変ではあっても混乱することはないでしょう。おそらく、指導者に指名されるだけの実力がある方なら、タスクや時間の管理はそれなりに、こなされていたのではないでしょうか。
そうした実力のあるスタッフが次に求められるのは、本人のタスクや目標だけでなく、後輩のタスク・目的を管理し、その達成に向けて後輩を導くことです。とくに指導対象が新人の場合は、仕事の仕方や目的意識が局所的になる傾向にあるので、彼らに代わって指導者が方向を制御し、新人の視線を上げる手助けをしてあげなければなりません。
このように、後輩指導は人材育成業務の半面、指導者側のチームマネジメント力のトレーニング機会でもあります。業務知識を教えることにとどまらず、自分自身の成長が図れる機会であると捉えることで、後輩指導業務に対する思いを強く前向きに変化させることができるのではないでしょうか。
指導者の組織での役割を確認する
さて、後輩指導の目的は、後輩や部下がチームの業績に貢献できるように成長を促すことです。しかし、チーム業績への貢献は、単に業務知識やスキルを上げるだけでは叶いません。業績に貢献するには、それらに加え、チームの士気をプラスに導く健やかな精神力、業務を円滑に進めるコミュニケーションとビジネスマナーなどが必要です。要は内外の別なく「一緒に仕事をしたいと思う仲間」になれるか、ということです。
もちろん、年次や社歴にかかわらず、人が周囲の信用や信頼を得るには時間経過の要素も必要です。だからといって新人や若手をいつまでもお客様でいさせてはいけません。指導者は、周囲のスタッフが新人・若手に「一緒に仕事をしたい仲間となる可能性」を感じてもらえるように導かなければならないのです。
そのために指導者がする指導は、業務スキルの教示から生活態度の指導に至るまで様々です。そして、それら一つひとつの指導は「この人と一緒に仕事ができて良かった」と周囲に思ってもらえるビジネスパーソンに新人・若手を育てるためのパーツです。つまり、パーツはパーツに過ぎず、それが集合したときに何をかたどるかが問われているということです。「パーツを組み立てながら、仕事を通して人を育てる」、これが後輩指導担当者に課された役割であるといえるでしょう。
「人を育てる」という重い業務であるため、指導者と指導対象者の相性や、指導対象者の資質が指導の成果に大きく影響するのですが、それは、将来的に指導者がリーダーとなったとき、多様なキャラクターを内包したチームをマネジメントする際の、たしかな経験となります。
そうして考えると、後輩指導の真の目的は、「指導者が後輩指導の経験をとおして次のステップに上がること」と言えるかもしれません。
「指導対象者とともに自分も成長する」。そう心がければ明日の行動を希望的にイメージすることができます。後輩指導は組織人にとって責任の重い業務のため、多くのストレスや苦労があることが予想されます。しかし、それだけに身になることも桁違いに価値あるものです。ぜひ前向きに真摯に取り組みたい業務です。
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