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ロクゼロコラム

3分で読める社内勉強会の話

スキルの定着をはかるなら、社内勉強会で反転学習

2021.06.25

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皆さんのチームは、社内勉強会の目的をどのように設定していますか? 社内勉強会に速効的に結果を求めて目的を決めるのは先走りというもの。とはいえ、せっかく勉強会を開催するなら、成果を期待したいのが本音ですよね。スキル定着が3割アップするといわれる「反転学習」を取り入れた社内勉強会なら、それが可能です。

まずは、反転学習のメリットをおさらい。

反転学習とは、本来の学習の順序を反転、つまり授業の前に生徒が予習して知識をインプットし、教室では、先生から更に詳しい説明を聞いたり、実践をしたりして知識を深め、実行力をつけようとする学習方法のことです。とくに、予習でe-ラーニングやビデオ教材を使用するのが特徴で、2000年代に入ってからアメリカで実施されはじめました。反転学習をしようとする全ての生徒にe-ラーニングを受講できる環境が必要なため、日本での普及にスピード感はなかったのですが、政府によるGIGAスクール構想や新型コロナウイルスによる遠隔授業の必要性などを背景に、ここにきて広がりを見せています。

この反転学習のメリットを整理してみましょう。

まず一つのメリットは学ぼうとする者が自分のペースで学習に取り組める点です。e-ラーニングやビデオ教材なら、分からない箇所を何度でも再生して見直すことができますね。

次に、アウトプットに特化した授業ができる点です。たとえば、教室でしか行えない「実験」とその実験結果の「検証」に時間をかけることができる、といった具合です。また、学習テーマについて仲間とディスカッションする時間を十分に設けることができるなど、今までインプットに費やしていた時間を、生徒が自ら考え発信する時間にシフトすることができます。

そして、講義の均質化もメリットの一つです。生徒の理解度や学習意欲は、教壇に立つ教師の習熟度によって大きく差が生じます。e-ラーニングやビデオ教材を使用することにより、生徒は皆、同じ講義を受けることができ、担当教師が違うことによる学習の質のバラつきがありません。

GIGAスクール構想…多様な子どもたちを誰一人取り残すことのなく、公正に個別最適化された創造性を育む教育を、全国の学校現場で持続的に実現させる構想(文部科学省)。 施策として、児童生徒11台端末、高速大容量の通信ネットワーク整備、学習用ツールを含むソフトウェアの選定・調達などが挙げられている。

ビジネスパーソンの反転学習環境

ここまでは、学生や児童を対象とした反転学習について述べてきました。本来の反転学習がそうしたものだからです。しかし、このメソッドを社会人が活用することも、もちろん可能ですし、有効です。

私たちビジネスパーソンには実際に体現すべきスキルがあります。そして、それが集合研修などのインプットだけでは身につかないことを経験としてよく知っています。研修後のアンケートで受講者の気づきを確認できても、職場に戻った後、受講者が研修どおり・期待どおりの取り組みができるかは別の問題です。一方で、反転学習はアウトプットを主軸においているため、一定程度のスキルと知識の定着を担保することができます。

また、withコロナの時代に集合研修の代替えとして実施されたオンラインでの研修の存在があります。オンライン研修は当初こそハード・ソフトともに手探りで開催されましたが、今や企業研修の主流となっています。受講者同士のコミュニケーションが深まらない、といった声も聞きますが、研修効果自体にそれほどの遜色はなく、コスト面でも優秀です。時代が変わってもオンライン研修は企業文化として残っていくことでしょう。こうして、ビジネスの現場では在宅で業務にあたり、一人でスキル教育を受けることがスタンダードとなりました。予習のためにe-ラーニングを活用することに違和感はありません。

社内勉強会こそ、反転学習に向いている

スキルアップが期待でき、環境も整っているのに、企業が反転学習に踏み込まないのはなぜでしょうか。それは、ハードではなくソフト面の不安要素が要因です。「あれ、e-ラーニングサービスは世の中にたくさんあるぞ?」と思われた方、確かにその通りなのですが、コストや受講状況の管理などがマッチしないため導入しないという企業もたくさんあります。

かといって、企業が独自で教育コンテンツを制作するのは手間や時間、コストがかかります。業務や技術をマニュアル化して、社員教育に使用できるまでに整備するのは大変な作業です。マニュアル化を前提にした技術や工程でなければ作成は難しく、そもそも社内にはマニュアル化の意味が薄い業務が多くあるものです。

そこで、活用したいのが社内勉強会です。社内勉強会のよいところは、扱うテーマ、参加者の人数、学習の進捗など、何ごともスモールスタートであること。テーマは横断的でなくても構わず、むしろ、必要と思う人がニッチに参加してもらえたほうが学習効果は高まります。属人化に頼らざるを得ない状況であったり、改定や改善が繰り返されるために、あえてマニュアル化をしない業務であっても、小さくスピーディーに対応できる社内勉強会であれば、学習テーマとして取り上げることも可能でしょう。

また、社内勉強会で反転学習を取り入れる際の副産物的なメリットとして、勉強会資料の軽量化があります。ある程度経験のある社員を対象とする場合は、勉強会のテーマとした技術や業務について、予習範囲や検討範囲などを記したガイドラインを示しておけば、勉強会当日は技術向上や業務効率についてディスカッションをする時間にあてることができます。これなら勉強会のために詳細な資料を作る必要はありません。新入社員や若手社員を対象とする場合は、それなりの資料が必要となりますが、一般的なビジネススキルを学習テーマに設定するのであれば、皆さんの手元に、すでに何らかの資料があるのではないでしょうか。

まとめ

社内勉強会は、運営チームや参加者の能動的な姿勢が基盤となって継続しています。それでも、業務時間外に勉強会資料を作成するのは骨が折れます。社内勉強会の存在には共感するのに、いざ自分が関わるとなると腰が重い。そんなファシリテーターも多いのではないでしょうか。参加者も、プロフェッショナルではない登壇者の講義を、集中して聞き続けるのは辛く感じてしまいます。勉強会を限りなくアウトプットに費やすことができたら、その時間は有意義で実りあるものになるはずです。次回の社内勉強会で反転学習にトライしてみてはいかがでしょうか。