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ロクゼロコラム

3分で読める社内勉強会の話

発表者がいない?!それでも全員満足のハッカソン勉強会とは。

2020.10.14

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社内勉強会運営チームの皆さん、勉強会開催には必ず発表者が必要、と思っていませんか?たしかに社内勉強会の運営ノウハウを検索すると、講師や発表者といった登壇者の選定や依頼方法などがヒットします。でも、さすが近年グッと普及してきた社内勉強会、各企業で新しい開催方式が見られるようになりました。

開催スタイルなんて、自由でいいのだ!

皆さんの企業の社内勉強会はどのようなスタイルでしょうか。まずは、登壇者(発表者)の解説や発表を聞いて学んだり、意見交換をしたりというスタイルが基本にあり、テーマの選定方法や開催時間など、各企業の社内勉強会史によって、そのスタイルは様々といったところでしょうか。

社内勉強会は、ITエンジニアやMR(医薬情報担当者)など、専門的かつ技術進歩の速い分野に従事する人たちが、スキルや知識を得るために広まった経緯があり、教える人と教わる人の存在が基本となっています。しかし、勉強会を開催することで、副産物的に社内コミュニケーションが向上したり、アイデアが商品・サービス化されたりすると、勉強会を継続すること自体に意味が生まれ始めます。そうなると、勉強会への参加ハードルが見直され、社内専門家がそうでない社員に教える、といったスタイルにこだわらない運営チームが増えてきました。

ケーススタディ勉強会

ケースは運営側が提供します。市販のビジネスケーススタディ本を利用したり、実際の業務で起きた事例などを取り上げることが多いようです。参加者は話し合いながら、各々の価値観や知識、経験をもとに最適解を模索します。

ライトニングトーク

参加者が短い時間で順番に発表していくスタイルの勉強会です。複数の部署の参加者から業務や興味・関心事が発表されるため、一回の勉強会で幅広い分野のナレッジを共有することができます。

もくもく会

一人では気が散ってしまう人や、静かな仕事環境をもとめる人が集まり、各自が自由に作業をする会のことです。カフェやコワーキングスペースのイベントとして行われていましたが、勉強会のスタイルとしても定着し始めました。

これらは社内勉強会で増えてきた開催方式で、場をしきるファシリテーターは必要ですが、いわゆる先生役の社内専門家は必要ありません。もくもく会に至っては、ファシリテーターの役割も相当に限定されていますね。

社内勉強会の注目トレンド、ハッカソン。

ここで、社内勉強会でも注目されはじめたイベントを一つご紹介しましょう。それは、ハッカソン(hackathon)です。ハッカソンとは、「ハック」(hack=高い技術力でシステムを動かすこと)と「マラソン」からなる造語で、IT関連のエンジニアがチームを組み、一定時間集中してソフトウェアを開発するイベントを指します。最近では、“ハック”が気の利いた言葉として受け取られていて、ライフハックやスタディーハックのように、別の何かと組み合わせて使われていますね。(ライフハック、スタディーハックは、生活や学習に役立つ知恵袋のような意味合いです。)

さて、ハッカソンですが、このイベントでは成果物に対してランキングがされ表彰があることが一般的です。ソフトウェアの開発は、エンジニアの癖や知見、経験分野の違いでそれぞれ構築のアプローチが違うのだそうです。そのため、同じ目的のソフトを仕上げたとしても、その表情やユーザビリティが異なり、順位付けが可能だといいます。

このことから分かるように、ハッカソンの仕組みは「目指そうとする最終的な到達地点に達するための手段は複数ある」という、目的と目標の概念が活かされており、実に汎用的な構成だといえます。つまり、ソフトウェア開発以外の分野でもハッカソンは開催が可能だということです。

例えば、業務改善案や新商品・サービスの開発について社内勉強会で取り上げ、チームや個人のアイデアを競うイベントとして開催することができます。同様のことは業務中、あるいは研修でも行うことがありますが、そこは『フォーマルな場所』の呪縛がかかっています。時間やコスト、社内リソースなどが頭をよぎり、また、時として先輩や上司への忖度などが加わって、ジャストアイデアで発信できないこともあるでしょう。一方で、社内勉強会は、部署、職種、年次も異なる社員が参加します。業務中には実現しない面々であり、そもそも有志参加のイベントなので高い自由度があります。

とにかく考える、ができるハッカソン勉強会の贅沢。

ハッカソン勉強会はケーススタディ勉強会に似ていなくもありませんが、表彰制度があることが異なります。チームや個人はそれぞれ競争相手なので、その日の勉強会が終わるまで共創がありません。ハッカソンを個人ワークとした場合は孤独な闘いになりますが、業務中の思考の節度を外して考えた答えは、きっと興味深く面白いもののはずです。

また、社内勉強会という短時間での取り組みであるだけに、精度の高さは期待されていないという前向きな諦めの輪郭も忘れてはなりません。「短時間で実施可能レベルのアイデアはまとまらない」という“観念”や、「時間内に何とかまとめなければ」といった“捨て身”の発想が、社内勉強会ならではの結果を生み出すことでしょう。

知りたいことの多くがインターネット上で即時に検索可能であり、社内コミュニケーションツールでナレッジが共有される現代において、脳に汗をかくように思考することは少なくなりました。そして、スピードが求められるビジネス環境は、私たちから考える時間をじりじりと奪っています。

本家プログラミング・ハッカソンでは実装不可能な結果となることも少なくはなく、イベントの有用性に疑問を抱く声もあるといいます。非公式でカジュアルな学習の場である社内勉強会だからこその、思考対決・ハッカソン。社内勉強会を継続してきた運営チームの皆さんであれば、結果にこだわらない、ひたすらに『考え抜く』という行為の大切さをお分かりいただけるのではないでしょうか。