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ロクゼロコラム

3分で読める社内勉強会の話

社内勉強会に「恥ずかしくて参加しない」人の心理

2021.03.29

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社内勉強会を根付かせたいと思う運営メンバーの気持ちとは裏腹に、参加メンバーに変化がなかったり、ファシリテーターにチャレンジする人が表れなかったり、悩ましい事態が続くことがあります。社内勉強会が活性化しづらい理由はいくつかありますが、その一つに「気恥ずかしさ」の心理が考えられます。

人事総務も困る、意識高い系を排除したい心理

社内勉強会の参加者が増えないとき、まずは勉強会の運営や内容、ファシリテーションの質などを改善していこうとするのが普通です。告知の方法を見直したり、勉強会テーマにテコ入れしたり、とやるべきことが思い浮かぶことでしょう。しかし、勉強会側だけに問題があるとも限りません。参加者側にも理由があるはずです。

本来業務が忙しく勉強会に参加する時間がない、こういったご意見は私どもにも多く寄せられるところですが、その言葉の後に「勉強会なんて、私なんて」という気持ちが見え隠れすることがあります。

企業研修のなかに、会社側が参加者を募集して行う「手上げ方式」の研修があります。会社主導の研修なので、上司に言われて参加する社員の方もあり、何とか研修の形になることもあります。しかし、そうした「推薦」がなく流れてしまう企画もあるのです。残念ながら、「自ら進んで研修に参加するなんて、どれだけ意識高いんだ、なんだか恥ずかしい」といった、努力を恥ずかしいとする認識も少なからずあるのです。

「恥ずかしがり屋さん」って、どんな人?

努力を恥ずかしいと思う気持ちは、どのような作用が働いて起こるのでしょうか。

まず言えるのは、「自己評価の低さ」です。

自分の能力・才能やセンスの低さが気になって自分で限界を決めてしまうと、努力をすることが無駄に思えても仕方がありません。また、そんな自分が努力をする、つまり勉強会にすすんで参加することが、分不相応な恥ずかしいことだと感じてしまうのも無理はないでしょう。

次に「自意識の高さ」も、努力=恥ずかしいにつながります。

「自意識過剰」は人目を気にしすぎるあまり行動が制限されてしまうことがあるので少しやっかいです。例えば、人目のある場面で緊張する「あがり症」。他者からの見え方に捉われる心理が緊張を招くと言われていますが、こうしたことが続くと、自意識の高さから、緊張する自分を認めたくない気持ちになり、発表の場から遠ざかってしまうこともあります。つまり、「できない自分が許せず、見ないふりをする」という心理作用です。自分の現状を見ないわけですから、“できる”“できない”のどちらでもなくなり、「できるための努力をしない」という行動をとってしまいます。努力をする人=できていない人、この間違った認識が、勉強会に出て学ぶ努力は恥ずかしいと感じさせてしまうのです。

どうしろって言うの?その克服法がとにかく難しい「恥ずかしがり屋さん」

恥ずかしがり屋や自意識過剰を改善したいと思う方は多いようで、その克服法が書かれた書籍やインターネットの記事がたくさんあります。そうした書籍に書かれている改善方法が、一見とても難しいのです。例えばこんな感じです。

〈恥ずかしがり屋・自意識過剰克服法の代表例〉

・積極的に発表の場をもつ

・ありのままの自分をさらけ出す

・自分を受け入れる

「これができれば苦労はない」という声が聞こえてきそうです。しかし、心理学でいう「情動のラベリング」が、まさに上記の3点を行動に表した方法です。自分がさらけ出される場から逃げない、「今注目を浴びて緊張している」「不安な気持ちだ」といったように気持ちを客観視して言葉にする、そうして最終的にすっぴんの自分を受け入れる。といった具合です。

自意識過剰な自分に打ち克つことができると、周囲の雑音に左右されずに自分の行動を決めることができます。自分に必要な挑戦を見極めることができるし、挑戦を経験と捉えて楽しむこともできるようになっているからです。

努力や向上心を笑う人も確かにいる、いるにはいるけど

ここまでは、勉強会に参加したいけれど躊躇してしまう“恥ずかしがり屋さん”の心理について述べてきました。次に、社内勉強会運営メンバーとして、社内にどのようにアプローチすればよいかを探ってみたいと思います。

 “出る杭は打たれる”という言葉がありますが、これには、自分より優れていそうな人が目の敵にされる、とか、差し出がましい者が非難されるといった意味があります。社内勉強会をよく言わない社員の心理には、周囲の目を気にせずにまっすぐに努力できる人を羨ましく感じる気持ちが作用していることもあるでしょう。社内勉強会の参加者やファシリテーターに対するやっかみ雑じりの攻撃的な態度は「出る杭を打つ」行為で、褒められたことではありません。

かつて、このコラムで心理的安全性について書いたことがあります。社内勉強会で参加者の発言を引き出すには、組織内の心理的安全性の確保が必要である、という内容でした。

https://rokuzero.jp/column/project-aristotle/プロジェクト・アリストテレスに学ぶ社内勉強会の在り方 ~心理的安全性の確保~

今回、運営メンバーが行うのは、心理的安全性の確保をアナウンスしアピールすることです。本来であれば、会社全体に心理的安全性確保を伝えたいところですが、あまりに職責と離れているというのであれば、社内勉強会では参加者の発言が保障されているなどの「勉強会ルール」をアピールしていきましょう。また、各部署のリーダーに社内勉強会を通知してもらうのも一つの方法です。上司の口から通知された勉強会であれば、恥ずかしくて参加を躊躇していた人も行動に移しやすくなります。また、勉強会の参加者に対する嘲笑など、対人リスクも少しずつ減少していくでしょう。

まとめ

私たちが勧める社内勉強会は、業務外の時間で行う、いわば非公式の学びのシステムです。しかし、会社に無断で行うものではありません。社内の会議室や通信環境、人材などを活用して行うには、会社に何らかの承認を得ていることでしょう。そうした背景を利用して公式な社内ネットワークを利用して勉強会をアピールしましょう。

社内勉強会を認知する機会が1回、2回と増えていくたびに、社員にとって勉強会の存在が当たり前になっていきます。当たり前に存在する勉強会であることが、参加のハードルを下げることに繋がり、恥ずかしがり屋さんでも参加しやすい勉強会となります。