Column
ロクゼロコラム
3分で読める社内勉強会の話
結局、テーマがすべて。社内勉強会のbeyond the theory!
2021.09.10
社内勉強会をする意義、運営側にとってこれほど明瞭なことはありません。まず、モノの考え方や知識を仕事仲間と共有する、その時間自体に意味があります。そして、勉強会をベースに派生する部署間のリレーションシップやアイデア、企業風土の刷新など、数えればキリがないほどワクワクな希望に満ちています。問題は、「このワクワクが皆に伝わらない」ということです。
社内勉強会の意義と成功のポイント
私たちが自律的有意義に楽しく仕事をするには、共に働く仲間への信頼感や貢献心が欠かせません。それは、業務と自分、会社と自分の関係に言い換えても同じでしょう。社内勉強会は社員間のコミュニケーションの場であったり、技術供与の場であったりします。それらが深まり向上していく過程で、勉強会参加者の間に信頼関係や協力して仕事をしようとする意識が芽生えます。もちろん日常的に、先輩・後輩、同僚との絆を深めることはできますが、社内勉強会であれば、部署を越境した意識変革が期待できます。
社内勉強会の目的として「社員間のコミュニケーション向上」を掲げる運営チームは多いでしょう。それは、良好なコミュニケーションによって①仕事が円滑に進むこと ②仕事のスピードが速まること ③イノベーションが起こること、などが期待できるからです。また、万が一のミスや事故に、迅速に対応するネットワークを作ることもできます。社内勉強会の目的「社員間のコミュニケーション」は、気心の知れた仲間と会社生活を楽しく過ごすことではありません。コミュニケーションを起点とした知識の標準化や社員のスキルアップ、あるいは前向きな問題提起を内包した目的なのです。
社内勉強会は、会社が一つの有機体として成長し、社員のエンゲージメントを盛り上げていく起爆剤となり得ますので、ぜひ成功させたいところです。そのポイントはシンプル、「メリットがあること」。
とはいえメリットの中身は色々です。知識を得られること、仕事に役立つこと、向上心を共有できる仲間が増えること、もしかしたら、会社からの評価が高まる、といった上昇志向的なメリットもあるかもしれません。
また、勉強会開催後には、「安全なイベントであったか」も大切なポイントとなります。社内勉強会における安全とは、拘束時間や思考力が仕事に影響を及ぼさないこと、勉強会中の対話を受けて起こる個人への攻撃がないこと、などが挙げられます。
自由参加が大前提の社内勉強会だからこそ、強制力を匂わせた時点でその効力は半減すると思ってよいでしょう。
オリ・パラに見るテーマ・開催意義の重要性
コロナ禍の6月、イギリス・コーンウォールで行われたG7サミットにおいて賛意を得たことで、東京オリンピック・パラリンピックは開催の方向へ一気に舵をきりました。それまで、ホスト国である日本では、国会をはじめ、専門家や評論家、そして一般の人までがあらゆる形で「開催すべきか否か」の議論を重ねていました。
この議論、オリ・パラにすでに多額の経費が掛かっていることもあって、多くが「メリット」「デメリット」の理論主張になり、「開催すればIOCに違約金を払わなくてよい」とか、「人流増大による新型コロナウイルスの感染拡大懸念」といった意見が挙げられました。しかし、人はデメリットのインパクト、つまりリスク要因に対してより強く反応する(※)といいます。1週間後、1か月後の未来でさえ不確実なこの状況下で、メリット・デメリットの議論は結論を偏向的にさせるのです。
さて、ここで議論に置き忘れられているのがオリンピックの開催テーマです。実は…
「スポーツには世界と未来を変える力がある」、これが大会ビジョンであり開催の意義です。またこのビジョンには、次の3つのコンセプトが定められています。「全員が自己ベスト」、「多様性と調和」、「未来への継承」。
本来、イベントはその目的が理解されていなければ思うように運営できません。例えば、友人の誕生日パーティを企画するとして、会場の予約や贈り物の準備は、目的を理解していてこそ適切に用意ができます。ところがオリンピックとなると、私たちは目的を振り返ろうとしません。また当事者である東京都も、このビジョンを議論の俎上に載せようとは思わないようです。
なぜなのか。私には、この大会ビジョンが実は後付けであり、真に都民、国民が納得したテーマではないことが影響しているように思えてなりません。まず、大会招致ありき。
このテーマなきスタートが、未曾有の事態を受けて思考不全を起こしている要因の一つではないでしょうか。
あるイベントが開催のデメリットのインパクトに打ち克つには、十分な安全性、成果への期待、沸き立つエンターテイメント性が必要です。それを端的に分かりやすく伝えるのがテーマであり、そこには魅力的な目的が盛り込まれていなければなりません。
オリ・パラという大規模イベントを例にテーマについてお話しました。しかし、途中で挟んだ誕生日パーティの企画のように、開催目的が明瞭であれば、私たちはとるべき行動を選択できることもお分かりいただけたと思います。
社内勉強会のワクワクを仲間たちに伝え、参加者を募ろうとするとき、テーマは重要なファクターなのです。
※プロスペクト理論…ダニエル・カーネマン、エイモス・トヴェルスキーが共同で発表した行動経済学の基礎理論。2002年ノーベル経済学賞受賞。
社内勉強会、魅力的なテーマの探し方3つのポイント
では、どのようなテーマが仲間を社内勉強会へと動かすのでしょうか。最後にそのポイントを3つご紹介します。
①会社の一員として、あるいは社会の一員として貢献できるテーマにする
SDGsの一端を担う活動の研究、社会ボランティアへの参加など、身近なところからスタートできるテーマがたくさんあります。会社のCSR活動に昇華する可能性もありますね。
②社内で必要な技術や知識・情報をテーマにする
商品知識や営業スキル、専門技術はもとより、D&I知識の共有もよいでしょう。業務関連法令の刷新を専門部署からアナウンスするのもよいですね。
③社員に共通の課題をテーマにする
現在進行形の社内課題をテーマにするのは、社内勉強会の原理原則といってもよいでしょう。ハラスメント事例、経費削減、社員の健康向上、他にもリフレッシュを促すオフィスの緑化、なんていうテーマもあり得ます。
そして、テーマの伝え方も隠れたポイントです。あまりに真面目すぎる言葉を使うのはNGです。参加を検討してもらいたい仲間に「難しそう」と思われては、気軽に勉強会に足を運んでもらえません。扱うテーマにもよりますが、「楽しく学び、知識を共有できる」と想像してもらうことが、参加のハードルを越えさせる手助けになります。
社内勉強会を開催する意義について、運営側の想いを伝える旗印は「テーマ」です。ぜひ魅力的で分かりやすく伝わる工夫をしてみてください。