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社会人基礎力の2018年再定義から、その鍛え方を考えてみた

2022.01.21

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「学生と社会人の違いとは何か」  これは新入社員研修で受講者にされる問いの一つです。社会人とは何かを新入社員自身が定義づけをし、社会人としての自覚を育むための質問です。つまり社会人マインドへの変換を促す問いというわけです。では、社会人マインドを体現するには、どのようなスキルが必要でしょうか。その答え、「社会人基礎力」にありそうです。

社会人基礎力とは、何か。

一般的に、新入社員研修を企画する際に、「社会人基礎力」をもとにカリキュラムを組むことが少なくありません。それだけ新人教育担当者は社会人基礎力を重要視しているのです。では、社会人基礎力とは何でしょうか。

社会人基礎力とは、2006年に経済産業省が「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として定義付けした概念です。当初は、若い世代の社会人を念頭において考えられましたが、2018年には、幅広い年齢層の社会人に向けた概念として再定義がされています。

再定義を受けて、現在の社会人基礎力は「ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力」と定義され、「人生100年時代の社会人基礎力」という言い方がされています。

つまり、長い人生を活力高く生きるために、社会人としての期間を、どのように受け止め行動するのか、それが表された概念といえます。

2006年に定義された「社会人基礎力」は、いわば人生の先輩から若い世代への、「社会人ならば、こうあれ」という提言だったともいえます。昭和の時代は長く、その間に社会環境は急速に変化しました。2006年(平成18年)を前に、昭和世代と若い世代との働く意識のギャップは大きく開いていたのです。

再定義がなされた2018年は、更に社会環境の変化が激しくなっており、「人生100年時代」がクローズアップされていました。そうしたなか2006年に若い世代に社会人のあるべき姿を提言した、人生の先輩自身も変化を求められたのです。再定義された社会人基礎力は、リタイア後を見据えたキャリア形成や生き方に言及しています。

2022年、現在の「社会人基礎力」は、あらゆる世代の社会人に向けた、普遍的なスキルとされています。

社会人基礎力を因数分解。社会人とは何か。

さて、ここで「社会人基礎力」を因数分解してみましょう。すると「社会人」と「基礎力」の2つに分けることができます。社会人が基礎的に持っている力、あるいは、持っているべき力ということですが、ここでいう「社会人」とは何でしょうか。

まず浮かぶのは、会社員や公務員など企業や団体に就職し勤務する人ではないでしょうか。では、アルバイトなどの非正規雇用者はどうでしょう。また、専業主婦(夫)はどうでしょうか。

一般的には自身の収入で自立した生活ができる人を社会人と表現することが多いですが、私としては、社会と関わり、チームに貢献することで、何らかの報酬(金銭以外も含む:幸福感や自己効力感など)を得る人全般を社会人と呼んでいいように思います。

たとえばマンションの理事会や趣味の集まりなど、営利団体ではないコミュニティに関わっているとき、その人はやはり社会人としての基礎力が求められます。

非公認で小さなコミュニティであっても、組織を円滑に運営し、心地よく過ごそうとするならば、メンバー各々の協調性と一定の秩序が不可欠です。勝手でわがままな人と一緒に活動するのは、なかなか大変ですからね。

社会人基礎力は経済産業省が定義付けをした概念です。したがって、企業・営利団体からなる産業界がベースとなっており、その意味ではそうした組織に属して収入を得る人を社会人とするのが実態でしょう。

しかし、「社会人基礎力」自体が、定年後のキャリアをも含む「人生100年時代」を謳っていることから、企業・営利団体に属するか否かに囚われない、「社会人」の定義を必要とします。

成人し社会に参画する理由や形は様々ですが、それぞれに関わる人がおり、担う役割があるとき、その人は社会人であるのではないでしょうか。

社会人基礎力、3つの力と12の能力要素

最後に社会人基礎力の中身をご紹介しましょう。

2006年の定義付けから今日まで、社会人基礎力の大綱は、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つの力と12の能力要素です。さらに2018年の再定義の際に、キャリアアップに必要な「学び:何を学ぶか」「統合:どのように学ぶか」「目的:どう活躍するか」が加わりました。

いずれも自分が関わるチーム(企業・団体、地域社会など)に貢献的に関わり、相互に学び、あるいは学びを与えるために必要なスキルで、プログラミングや簿記、法律など、属する組織に特化したスキルとは異なります。つまり所属や役割に変化があっても役立つスキルといえるでしょう。

以下、経済産業省が定義した3つの力と12の能力要素です。

前に踏み出す力(アクション)~一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力~

●主体性・・物事に進んで取り組む力
●働きかけ力・・他人に働きかけ巻き込む力
●実行力・・目的を設定し確実に行動する力

考え抜く力(シンキング)~疑問を持ち、考え抜く力~

●課題発見力・・現状を分析し目的や課題を明らかにする力
●計画力・・課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
●創造力・・新しい価値を生み出す力

チームで働く力(チームワーク)~多様な人々とともに、目標に向けて協力する力~

●発信力・・自分の意見をわかりやすく伝える力
●傾聴力・・相手の意見を丁寧に聴く力
●柔軟性・・意見の違いや立場の違いを理解する力
●状況把握力・・自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
●規律性・・社会のルールや人との約束を守る力
●ストレスコントロール力・・ストレスの発生源に対応する力

参考:経済産業省 社会人基礎力https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/index.html

社会人基礎力の向上に必要な取り組み

これからの社会は産業の成熟化や市場のグローバル展開などによって、今までの経済活動を前提とした商品やサービス開発では企業の競争力が担保できないことが予想されます。また、SDGsの拡がりからも分かるように、人と人、人と社会、人と自然との関わり方も劇的に変化していくことでしょう。

そうした時代に活躍するために、「社会人基礎力」の定義は、主体的に行動し、自律的で柔軟な思考で物事を創造し、偏見や壁のない協働姿勢で人間関係を築くことを求めています。

「そう言われましても・・・」

こんな風に感じた方はいらっしゃいませんか?わかります。「基礎」といいながら、社会人基礎力は一朝一夕で体現できるような簡単な概念ではありません。これをすれば一挙にスキル習得ということはなく、日々の地道な積み重ねを要するのです。

とはいえ、社会人基礎力の獲得は、意識的に過ごすことによって各段に速まりますので、その方法を整理します。

現在スキルの把握と課題の明確化

まずは自分自身の現在位置を確認しましょう。ただし社会人基礎力の12の能力要素は、どれも数値で表すことができない項目ばかりです。各社から診断ツールがリリースされていますが、できればチーム内の複数の人に評価をしてもらうことをお勧めします。お分かりのとおり、12の能力要素は相手によって発揮の度合いが変化することもあり得ますので、自分の行動スタイルを360度的にヒアリングできるとよいでしょう。

チームの社会人基礎力を上げる

12の能力要素は多分にコミュニケーションの質に関わっています。よって一人で基礎力を上げようと努力するより、仲間とともにスキル習得を目指すことの方が自然です。

また、現在の社会人基礎力が幅広い年代に向けたものに再定義されたことも理由の一つです。それぞれの世代が同じレベル感の目標を持って、教え、学ぶ関係を築くには、個人スキルと受け取るより、チームスキルであるとした方が効果が上がるでしょう。

個人で目指す場合も、チームで目指す場合も、周囲の協力は不可欠です。スキルの現在位置の確認や確認に対するフィードバックが社会人基礎力の向上に繋がります。主体的に、柔軟に協働姿勢で、自分から発信し、声掛けをしていくことを意識しましょう。

 

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