Column
ロクゼロコラム
成長企業の社内勉強会探訪
成長企業の社内勉強会探訪 Vol.06_モバイルファクトリー編
2020.11.13
2001年創業のITベンチャー企業。『わたしたちが創造するモノを通じて世界の人々をハッピーにすること』をミッションに、「ソーシャルアプリ事業」「モバイルコンテンツ事業」を中心としたサービスを展開。2018年からは「ブロックチェーン事業」をスタート。2020年夏、ブロックチェーンの要素を加えた新作ゲーム「駅メモ! Our Rails」の提供を開始した。
会社サイト
https://www.mobilefactory.jp/
採用サイト
https://recruit.mobilefactory.jp/
10年以上続く社内勉強会の秘訣に迫る。モバイルファクトリーが何よりも社員の主体性を尊重するワケとは?
ソーシャルアプリ、モバイルコンテンツを主力事業とする、株式会社モバイルファクトリー。「ステーションメモリーズ!」、「駅メモ! Our Rails」、「駅奪取シリーズ」などのコンテンツを展開している。同社のエンジニア組織開発責任者であり、専門職勉強会運営チームを牽引する小林 謙太氏に話を伺った。
エンジニア組織開発責任者
東北大学大学院数学専攻修了後、2011年にモバイルファクトリーにエンジニアとして新卒入社。5年ほどサービスの開発を行った後、プロダクトマネージャーを担当。新規サービスの立ち上げに関わる。現在はエンジニア組織開発責任者として、育成・採用・広報などを行うヒューマンリレーションズ部にて、エンジニア組織の課題解決に取り組む。Perl技術および文化の啓蒙促進をする一般社団法人Japan Perl Associationの理事でもあり、社外においても技術の発信に積極的。
ライター / 編集者
遠藤 孝幸(えんどう たかゆき)
2017年より株式会社ヒップスターゲートに参画。前職での人事経験を活かしてお客様への提案活動に邁進し、入社後わずか3ヶ月でリーダーに昇進。現在は営業部門責任者として、オンライン研修の営業、社内勉強会の普及、後進育成に心血を注いでいる。
遠藤
本日は貴重なお時間を頂戴し誠にありがとうございます。まずは、社内勉強会の取り組み内容を教えていただけますでしょうか。
小林さん
当社では、社員の成長やスキルの向上を目的とした「専門職勉強会」が業務時間内でほぼ毎日1時間(16:30~17:30)開催されています。
遠藤
ほぼ毎日開催とは素晴らしいですね。そんなに頻繁に開催できるのはなぜでしょうか。
小林さん
基本的にはルールを設けず、社員の主体性を尊重していることが大きいように思います。そのため、業務のノウハウ共有をするもの、カンファレンスに参加して学んだことを披露するもの、書籍の輪読するものなど開催の形式や内容は自由で多岐に渡ります。
遠藤
なるほど、主催者に裁量を持たせることが多頻度開催の要因なのですね。開催内容によって参加者数にも差が出ると思うのですが、だいたい1回の開催でどれくらいの人数が集まるのでしょうか。
小林さん
少人数で勉強会を実施する場合もありますし、参加者が社内の半数である50名を超えることもあります。ただ最近ではオンライン形式で開催していて、何か作業しながらでも気軽に参加できるため、全体的な参加率は上がったと感じますね。
遠藤
オンライン形式となり参加ハードルが下がったということですね。勉強会の模様は、全社的に情報共有されているのでしょうか。
小林さん
チャットツールであるSlack上で資料を公開し、社員全員が閲覧できるようにしています。さらに、公開資料には「いいね」や「コメント」を付けることができるので、たまに勉強会の資料が社内でバズることもあります。そうすると、主催者にまたやってほしいとオファーが来ることもあるんです。
遠藤
参加者以外の人達も社内勉強会に関与できる仕組み、大変参考になります。
小林さん
ありがとうございます。社員全員で取り組むことが社内勉強会を文化として浸透させ、継続につながると考えています。実のところ社内勉強会は発表者の負担が大きいので、せっかく準備しても参加者数が少ないとモチベーションが下がるんですよね。社内全体で資料を共有して「いいね」をもらうことで開催者の承認欲求を満たす、これがやる気を高める。とても重要だと思っています。
遠藤
社員の主体性を尊重されているだけに、モチベーションコントロールは非常に重要ですよね。それでは、社内勉強会の運営体制について教えていただけますか。
小林さん
運営チームは、責任者である私と公募で集まった他事業部3名の計4名で構成されています。
遠藤
社内勉強会を運営するなかで、注力されていることはございますか。
小林さん
会社としての視点を持つことを意識していますね。つい先日、社内勉強会のビジョンを「会社として良いアウトプットが広がっている状態にする」に設定しなおしました。当社の社内勉強会は10年以上続いていますが、ここまで会社が時間を投資しているのは、十分な成果、アウトプットを捻出してほしいという想いがあるからです。つまり、技術力の向上やコミュニケーションの円滑化など、時間やコストの投資に見合った価値を創出してほしい、ということですね。
遠藤
アウトプットの質の向上や、勉強会の価値の測定は、どのようにされているのでしょうか。
小林さん
アウトプットの質の向上でいうと、良いアウトプットの事例を社員に提示しています。具体的には、社員投票などにより有益なアウトプットを選出し、「グッドアウトプット賞」として表彰しています。勉強会の価値の測定に関しては、NPS(※)で社員の満足度を測定しています。
※「Net Promoter Score」の略称であり、顧客ロイヤルティ(商品やサービスなどに対する信頼や愛着)を数値化した指標のこと。
遠藤
表彰制度は参加者のモチベーションにつながる素敵な制度だと感じます。御社では社内勉強会を10年以上継続されてきましたが、ずばり継続の秘訣は何でしょうか。
小林さん
利用ハードルを下げることにつきますね。当社もこれまでずっと上手くいっていたわけではないんですよ。過去には失敗したこともありました。会社として、社内勉強会のクオリティを求めて、発表の敷居が高くなり全く利用されなくなりました。ですが、そもそも、知識のアウトプットをしてもらうこと、参加してもらうことに意味があると考えて、テーマ内容は事業と関係ない内容でも良いということにしました。
遠藤
そのような過去の経験を踏まえて、現在の体制が確立されていったのですね。もし現状で社内勉強会における課題があれば教えていただけますか。
小林さん
利用のハードルは下げつつも、事業へのインパクトは欲しいですね。社内勉強会が契機となり、売上向上に大きく貢献できた、新規事業が立ち上がった、コストが大幅に下がったというような実績を作っていくことができれば良いなと思っています。現在の体制は、実施テーマを参加者の裁量に任せている側面が大きいので、偶発性に頼ってしまっているところがあります。そこを、この領域が欠けているよねとか、ここをもう少し手厚く学んだ方が次の事業をするときにつながるかもしれないね、と会社全体像を捉えながら勉強会が進んでいくとインパクトも出やすいのかなと考えています。
遠藤
会社側の経営方針、今後の事業展開も踏まえて、テーマに上手くリンクさせるためにも、運営側のハンドリングがより重要となってきますね。御社の社内勉強会は歴史も長く、運営に関するノウハウも存分に蓄積されてきていると思いますが、これから社内勉強会を始める企業様へアドバイスがあれば、お聞かせいただけますか。
小林さん
当社の経験から一つ言えることは、費用対効果を期待し過ぎないということですね。例えば、コロナ禍によるリモートワークで希薄化したコミュニケーションを課題に設定して、勉強会の目的を社内コミュニケーションの活性化にすると始めやすいのではないかと思います。
遠藤
他の企業様が社内勉強会の稟議を上げる際の一つの参考ポイントになりますね。最後に、小林さんにとって社内勉強会を一言で表すとしたら、何になりますか。
小林さん
社内勉強会は「ハブ」ですね。部署横断的に社員同士がつながることで、コミュニケーションやスキル、知識のつながりができる、そのような場だと感じます。
遠藤
まさに御社の社内勉強会の体制を如実に示す一言ですね。お話ありがとうございました。勉強会継続の秘訣、現状の課題と今後の展望など非常に勉強になりました。お忙しいなか、誠にありがとうございました。